諸君〜、春は苦いものを食べよ。
こんなタイトルにしたものだから、『攻殻機動隊』のタチコマとソ連時代の
プロパガンダアートがいっせいに頭の中にほわほわと浮かんできてしまった。
OK、いったん頭の中を空にしよう、心をしずめよう。
先日、licaさんと山菜の話をしていた時に「春は苦味をとるといいのよ」と
教えてもらった。確かに春の味覚といえば山菜で、山菜って苦いよね。
諺にも「春の皿には苦味を盛れ」というのがある。苦味は五味(酸味・苦味・
甘味・辛味・塩味)のひとつ、中国の五行説では木(酸味)・火(苦味)・
土(甘味)・金(辛味)・水(塩味)にそれぞれ対応する。古来より毒には
苦味を含むものが多く、人は苦味を感じると吐き出すという本能的な反応を持つ。
山菜は苦くえぐみも強いけれど、細胞を活性化する栄養素がたっぷり含まれ
冬の間に体にたまった脂肪や老廃物をデトックスしてくれる作用も併せ持つ。
ダーチャが山エリアというのもあるだろうけれど、私の周りには山菜や食に精通
している人が多く、恵まれているなぁと思う。ミックスハスキー メイシーちゃん
(この時 3ヶ月手前)のお父さんであるポカリさんも、いつも美味しい食材を
おすそわけしてくれたり、レシピを教えてくれる「おいしいものメンター」の
ひとりだ。
採ったばかりの行者ニンニクをいただいた時の1枚。
<おいしいものメンター ポカリさんのレシピ1>
1,行者ニンニクを切らずにそのままオリーブオイルでソテー
2,全体に火が通ったらさっとワインをかける(赤でも白でも)
3,とろけるチーズをのせる
手軽で簡単、アウトドアでも取り入れられる調理方法。
何より、行者ニンニクが豊富にないとできない贅沢な食べ方だ。
そして昨日は採れたての立派なウド。惚れ惚れする深山のパワフルさ。
採れたての新鮮なウドはアク抜き不要。皮も柔らかくこのまま食べられるという。
ポカリさんが、また超手軽な調理方法を教えてくれた。
<おいしいものメンター ポカリさんのレシピ2>
1,ウドを細かく切る
2,お味噌汁の具にする
「ウドをお味噌汁に?」意外だったのだけれども、これが美味だった。ちいさな
味の新境地。こういう小さな発見、喜びのひとつひとつが日々の糧となり暮らしを
彩っていくのだと実感する。
こちらは定番の酢味噌和え。ウドが新鮮なのでそのまま和えた。苦味と柑橘類の
ようなさわやかさが混じり合うこの独特の味。まさに、春の味である。
またある日の食卓。
きのことウドのチーズ絡め・パプリカパウダーライスのワンプレート。
昨年までおうちのあった跡地が一面、たんぽぽ畑になっている。
たんぽぽの花もベルギーでは‘たんぽぽジャム’として愛用されていると
licaさんに教わった。「そうだ、これって西洋たんぽぽなんだよなぁ」と
すっかり帰化した風貌の黄色い花たちを見ながら思う。たんぽぽも葉は
サラダにするけれど、やっぱり苦い。
あ、それで思い出したんだけど。「苦い」にちなんだ諺もうひとつ。
良薬は口に苦し。よく効く薬は苦いように、身のためになる忠告は素直に
受け入れにくいという意味だ。苦すぎると吐きそうになる。耳にイタイと
聞きたくなくなるものだけれども。諸君〜、春は苦いものを食べよう。