シャーレーポピー、ダーチャの染谷くん
昨日まであんなに小さなつぼみだったのに、翌朝にはもう花ひらいている。
この時期の庭は展開が早くて目を離せない。明るくなると庭で起きていることを
確かめたくてぼさぼさ頭のまま外へ出る。朝露で空気がまだ湿っているなら
パーカーのフードをかぶればいい。フードをかぶったら『TOKYO TRIBE』
の染谷将太くんになった気分だ。そうだ染谷くんのラップを真似ようとしたけれど
はて、肝心の歌詞は。そもそも覚えていないんだった。じゃぁあくまで気分だけ。
そうしよう、何でも気分が大事なんだな。
ケシ科ケシ属
学名:Papaver rhoeas
英名:Shirley Poppy
和名:雛芥子(ひなげし)、虞美人草(ぐびじんそう)
事件は現場で起きるというが、ダーチャでも然り。今朝も異変は起きていた。
昨日まであんなにしんなりしていた八重咲き‘シャーレーポピー’の蕾が
オレンジ色の花になっていた。また、開花の瞬間に立ち会う事は叶わなかった。
中国を旅した時。広西州から雲南省まで寝台列車で移動したことがある。
給湯器やお手洗いへと続く車両間にずっと3人の男が立っていた。背広を着た
2人とうつむき加減に立つ、くだけた格好の男1人という組み合わせ。ここは
寝台車。くだけた彼はいいとして誰もがくつろぐおうち着の中、眼光鋭い
2人の男の背広姿は異様に目立った。何だか刑事ドラマの刑事と犯人みたい
だな〜なんて思っていたら明け方、停車した駅でちょうど降りて行く3人に
出くわした。くだけた格好の彼の手には手錠がしてあった。本当に、事件は
現場で起きていた。
*犯人ではありません。
ここ日本でふつうに暮らしていたら刑事と犯人が揃って現れる機会なんて滅多に
ないんだから、たった一度の中国旅行でそんな光景を見かけるとはどんだけ
高い確率なんだ。そう鑑みると日々、庭で起きているはずの開花の瞬間に
これだけ立ち会えないのは不可思議を通り越して摩訶不思議、もしかすると
もうこの世の営みではないのかもしれない。
シャーレーポピーは1880年代の英国 Shirley(シャーレー)で交配を繰り返した
牧師の手により誕生した。それで地名が花の名についたことよりも、この牧師が
雛芥子の花にいかにご執心だったかが想像されていかにも英国らしいと感じる。
大きくてインパクトあるヨーロッパ原産のポピーは少し頭が重そうだ。
近くで覗き込んだり、遠巻きにオレンジ色が揺れるのを眺めたり。嬉しそうな
ダーチャの染谷くんを眺めるもうひとりの自分。
花の終わったカレンデュラとパンセ(パンジー)のオレンジと黒があんまりきれい
なので、摘み取ったあと台上に置いた。風で飛んだパンセは下で、カレンデュラは
そのままで。風雨にさらされより一層美しい。
桃色に染まる‘誰そ彼’時。明日に向かって鎮む太陽。
そろそろ染谷くんのパーカー洗うかなー。