キャベツカッター出番なし。ソープワートはサボン草。

 

ようやく夏らしい気温になった。寝苦しい夜はまだ一度もないけれど「暑いなぁ」

って言って扇風機を使えることが嬉しい。少しでも肌寒くなると「今だ!」と

言わんばかりにダウンを羽織る南国の人のように、少しでも暑さを感じると

ノースリーブやショートパンツと俄然、夏仕様になる北国の人たち。だって、

薄着を楽しめる期間が短いんだもん。そんなわけで私も鮮やかなブルーに

ポルカドットの夏用部屋着をようやく着れて喜んでいる。

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窓辺から見えるダーチャのようす。すっかり緑の世界。

 

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ソビエト時代のキャベツカッター

 

本場・ロシアのダーチャではかつて(現代のダーチャはいわゆるイングリッシュ・

ガーデンを楽しむスタイルが主流だとか)ロシア料理に欠かせないキャベツも

たくさん育てていたそうだ。これはソビエト時代のキャベツカッター。

ロシアの古都・サンクトペテルブルグを訪れた折に見つけたもので

「キャベツ専用カッターってあるんだ」と感心したのを覚えている。ちなみに

うちの紫キャベツは2株とも、人の口に入る前に、見事なまでに虫に食べられ

キャベツカッターの出番なしだった。

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いろんな銅葉レタス、パセリ、ナスタチウムの花

 

食糧危機の近未来がささやかれる中、そんなゆるい事でどうするんだ。霞を

食って生きる仙人にも‘不食’にも到底なれそうにない私は一体、何を食べて

生命をつなげば良いのだろうか。なんて苦悩する暇なく、庭ではレタスや

ナスタチウムがどんどん育つ。油断しているとトマトやピーマンが実りの

ピークを迎える。

自分で育てた野菜を収穫する行為。それ自体が恩寵というか、豊かな気分を

運んでくる。充足感、満足が広がると、不安に耳を傾ける時間が減る。

食事情としては質素かもしれないけれど、この満ち足りる感覚は、禅の

「足ることを知る」に通づると思う。何よりこの行為自体が楽しい。

迷ったら楽しい方を選択して、「楽しい」とか喜びの連続でこの世界を

渡って行こう。そうして過ごす人が増えたらいいななんて、こういうのも

ユートピア思想っていうんだろうか。

 

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ソープワート

 ナデシコ科シャボンソウ属

 Saponaria officinalis

 英名:soapwort

 和名:しゃぼんそう(シャボン草)、サボンソウ

 

ピンク色の、可愛くて芳しい花をつけるソープワート。「シャボン草」とか

「サボンソウ」とも呼ばれる。‘サボン’はフランス語だとずっと思っていた

けれど、ヘブライ語イスラエルの言語)でも「SAVON」(サボン: 

意味も、石けん)と呼ばれていると知り、言葉って伝播(でんぱ)するよ

なぁって思う。この可愛いお花、最初は1株だけだったのが、どんなに辛く

厳しい冬の年も耐え、あれよあれよと増えて‘大株主’になった。当初は珍しさ

と「もったいない病」で抜かずにいたけれど、まるでアップルミントのように

して他の植物を駆逐して勢いよく増える姿はもはや勢力拡大する一方の、

手のつけられない暴れん坊ギャングと一緒。英語圏のサイトで検索をかけても

「とにかく強い」「路傍でもよく増える」の表現が圧倒的に多い。

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と言うわけで。増えた君達が持つ成分‘サポニン’は有難く石けんにするよ。

 

根は毒性が強いというので使わずに、収穫した茎と葉を煮出して石けんとして

活用する事にした。煮出し(煎じ)時間の関係か?泡立ちはいまいちだけど、

緑色の液体になった。

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この緑色が繊維に移ってしまう場合ありと言うことで、キッチンクロスなど色移り

して良いものを洗うことにした。英語サイトでは「アンティークリネンを洗うのに

最適」とか「古いウールの織物を洗う」という表記が多く目につく。石けんや

洗剤が普及する近代まで、サポニンを含むこの植物の洗浄力がどんだけ重宝されて

いたかを伺わせる。

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芳しく可愛らしいパステルピンクの花。

学名‘saponaria’の‘sapo’はラテン語で「石けん」の意味。明治時代には日本に

入っていたそうで、明治ってどんだけ文明開化?!って思う。葉を揉むだけでも

泡立つけれど、わりと肌が強い私の手でも煮出す前の葉には刺激を感じるので、

肌が弱い方は用心しながら少しずつ触ることをおすすめする。

 

 

 

健胃を願ってミント・ブラザーズ

 

夏至が過ぎ、(北海道は8月だけど)七夕が過ぎ、存分に日光を浴びたおかげで

茂って、繁って。庭のハーブがすごいことになっている。ので最近は、時間を

見つけては旺盛な彼らを刈り取り水洗い、ドライにしたり、ウォッカやビネガー

(酢)に浸ける作業に取り組んでいる。

 

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ブロンズ・フェンネル(銅葉茴香)。ビネガーに浸けるため、収穫。100円SHOP

で見つけた猫の蚊取り線香ホルダーはまだ出番がないけれど、そこにあるだけで

フォトジェニックなゆるキャラ存在感。にゃごむ。

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ワームウッド(ニガヨモギ)。こちらはウォッカに浸け込む予定で収穫。ヨモギ

さらに強くなったようなパワフルな香り。シルバーリーフが美しい。

 

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これはハーブのレディース・マントルの園芸種、アルケミラ・モリス。園芸用

なので薬効はないそうだけど、葉の形、小さな黄色い花の姿がとても愛らしい。 

 

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こちらは園芸種、青いデルフィニウム。もう終わりがけの花姿も美しく、ブリキの

じょうろでさいごまで観賞させていただくことにした。

 

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こちらも園芸種、ニゲラ。ちょっぴり時計草のような花。花芯の形も素敵。

 

 

そして。この庭で、最も威勢の良いアニキ達(*もちろんアネキもいるけれど、

昨今すっかり少なくなった、男気ある人々へのオマージュに、あえての

アニキ呼ばわりで)。それがミント・ブラザーズ。

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向かって左から、アップルミント・ペパーミント・スペアミント

 

ミント

 シソ科ハッカ属

 学名:Mentha.L

 英名:Mint

 和名:薄荷(ハッカ)

 

環境が気に入ると、土中、地下茎(ランナー)を伸ばしてどんどん繁殖する

ミント。厳冬の北海道でも容易に越冬し、毎年、旺盛な生命力で増え続ける。

油断するとランナーが森まで行ってしまう=走っちゃう、ので、庭の中では

おおらかだけど森にだけは走って行かないよう気をつけている。育てた経験の

ある人は皆さん顔をくしゃくしゃにして「あー、ミントかー!」とおっしゃる。

そのたび「あ、この人も増やしちゃったんだ」と微笑ましい気持ちになる。

 

さすがはメントール(Menthol)含有量が高いだけあって、香りの清涼感と

爽やかさは天下一品だ。しかも健胃効果がある。私はもともと胃腸が弱く、

寄る年波(としなみ)には勝てないというわけで、今年は素直にミント酒の

お世話になろうとウォッカに浸けることにした。いつぞや「庭には、その家の

人にとって必要な植物が多く育つようにできている」と聞いた言葉が、まぁ

ミント軍団(もはや、ブラザーズでは済まない域に達したもよう)はかなりの

確率で繁殖する庭が多いとは思うんだが、案外、的を得ていると感心したことが

ある。きっとブラザーズの旺盛な生命力は、胃腸の弱い私への彼らなりのエール

なのだ。もともとウォッカの味がきらいじゃないのと虫除けとしても使いたいので

甘味(砂糖)はいれない。形から入るタイプとしては「やはりウォッカといえば

ジャケット(パッケージデザイン)の素敵な‘クバンスカヤ’だろう」という事で、

御覧ください、白馬にまたがる黒いマントのコサック兵、背景の鮮やかな赤。

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日付と内容がわかるように表記して冷暗所へ入れた数日後。ちょっと色づいている。

 

スペアミント

 シソ科ハッカ属

 学名:Mentha spicata

 英名:Spearmint

 和名:ミドリハッカ、オランダハッカ

 

ミントを入れたカクテル‘モヒート’で使われるミント。殺菌、健胃作用。

 

 

ペパーミント

 シソ科ハッカ属

 学名:Mentha piperita

 英名:Pepparmint

 和名:西洋ハッカ、胡椒ハッカ

 

健胃、発汗作用。

 

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こちらは料理用にとビネガー浸け。メインはアップルミント、少しペパーミント。

 

アップルミント

 シソ科ハッカ属

 学名:mentha suaveolens

 英名:apple mint、woolly mint、round-leafed mint

 和名:丸葉薄荷(マルバハッカ)

 

葉がぷっくり厚くフルーティな香りのするミント。整腸、殺菌作用。

 

 

匂天竺葵、コウノトリ、アリマキ

 

明日、庭で寄植えWSが開催されるというのに豪雨になった日。

お願いしていた外看板を仕上げてもらったので「楽しくしてたら何とかなるかな」

マインドで、全身で雨を受けながら看板をとりつけた。

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それが功を奏したのか、はたまた晴れの性質をもつ方々が集ったからか、

いずれにせよ当日は、昨日の豪雨が嘘のような爽やかな快晴の1日になった。

 

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マーガレットとアカツメクサシロツメクサの花々が咲く、何てファンシーな

光景。子供の頃、こういう風景みながら通学したよねというノスタルジー

仲良しだったむっちゃんと、可愛いお花やきらきら光る小石に魅了されて

学校までなかなか進まず、いつもふたりで遅刻していたことが思い出される。

懐かしさが記憶の扉をこじ開け蘇ってくる。感情が動く。ここを「エモい」と

表現する人の多い一因なのかもしれない。

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ガーデンショップ GreensBeeさんを講師にお迎えして、ハーブの寄植えWSを開催

頂いた。「寄植えの植物はすべてハーブで、プランターは土に戻る紙製で」という

こちらの意向を叶えてもらった形だ。

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蒸留器をもっている人、園芸に手慣れている人、ハーブの知識がある人。

いろんな方が参加してくれた。どことなくソーシャルディスタンスをとり、

マスクとビニール手袋必須なところがビフォー・コロナでは想像していなかった

新習慣。 

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GreensBeeさんにもうひとつマストでお願いしてあった、ニオイゼラニウム

得も言われぬ芳しい香りがある。フレンシャムレモン・斑入りレモン・

ローズ・ストロベリー・ジンジャーと、何と5種類ものニオイゼラニウム

揃えてくださった。北海道では越冬しないけれど、乾燥に強く暑中の寄植えに

向く。アロマテラピーローズゼラニウム精油はこのハーブで、はちみつに

葉を入れておくととても良い芳香になり、葉の形も花の色も可愛い。

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ニオイテンジクアオイ

 フウロソウ科テンジクアオイ属

 学名:Pelargonium graveolens

 英名:Rose geranium

 和名:匂天竺葵

 

原産は南アフリカで「Pelargonium(ペラルゴニウム)」の名前でも流通する。

ペラルゴニウムの由来はギリシャ語の‘Pelargos’で、コウノトリのことだ。

コウノトリを初めて見たのはスペインで、その大きさに度肝を抜かれた。

ルーマニアで見かけた時に、コウノトリは人里で営巣すると教えてもらい、

それで電柱の上に巨大な巣を作るのかと合点がいった。ペラルゴニウム

の種子がコウノトリのくちばしのように長細いからこう呼ばれるようになった

そうで、学名とかいうと小難しい感じがするけれど、由来を知るとけっこう

原始的というかシンプルな感覚なんだよなぁと、点在する自然の魅力で

なかなか学校にたどりつかなかった子供時代を重ね合わせて正当化してみたり

する。ちなみに‘graveolens’には「重い香り」という意味がある。あーわかるなぁ

と思う。嗅ぐと納得なんだけど、ニオイゼラニウムって芳しくて、香りに重厚感

というか、重みがある。

 

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GreensBeeさんに頂いた寄植えポット。漂う芳香にこびとのおじさんも嬉しそう。

 

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楽しく夢中なじかんはあっという間。皆が帰ったあと、サーブしたレモンバーム

ミントのブレンドティーでひとり余韻に浸っていたら、おいしいものメンターの

ポカリさんが来て「外に人形が置いてあると思ったら動いてびっくりした!」と。

外で人の形。ポカリさん、それはきっと、私に化けた案山子です。 

 

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 これが動いた人形、簾舞の案山子です。

 

寄植えWSの時、庭のワームウッド(ニガヨモギ)を一緒に見ていた人と

たくさんのアブラムシが茎についていて、そこにせっせとアリが来る様子を

眺めた。そして「アリってアブラムシが好きなんでしょうね」と少し呆然と

なりながら話した。数日たって、ワームウッドのアブラムシがひどい茎だけ

カットしようとしたら、あれ。アブラムシのついた茎が少なくなっていた。

アリが食べちゃったのかと思ったら、アリはアブラムシが出す甘い排泄物が

大好きで、アブラムシを天敵から守っていると知る。相変わらず、せっせと

アリは働いて=歩きまわっている。アブラムシの別名はアリマキだそうだ。

庭で起こる共生関係。

 

 

ハンガリー・ブダペスト郊外の菜園生活

 

じっとしていても自然と汗ばんでくる真夏日に、ブダペストから車で

1時間ほどの郊外で暮らすコレクターさん宅へおじゃましたことがある。

ピンク、白、赤の可愛いゼラニウムが「ウェルカム!」って感じで出迎えて

くれて感激した。

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アンティーク好きが嵩じて収集家兼ときどきディーラー的な活動をしている

人の友人と、数年前に蚤の市で知り合ったことがこの訪問のきっかけだった。

その友人女性が彼女を紹介してくれて、‘聖イシュトヴァーンの日’という

ハンガリーの祝日に「何も予定がないから」とコレクションを見せてもらえる

ことになった。

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コレクションルーム前にもたくさんのゼラニウム

 

長くブダペストで暮らしていた初老のご夫婦。仕事が定年になったのを機に、

夢だった自給自足的ライフスタイルを送れる郊外の中古物件を購入、数年前、

便利な都会から田舎暮らしへと生活をシフトチェンジしたそうだ。

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奥に見える白い建物が住居で、あとはけっこうな広さの庭になっている。

この辺り一帯、同じような住宅が並んでいてどこも広い庭がついていた。

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樹々の間に渡した洗濯紐に洗濯物が無造作にかかる。こういう光景を見る

たび「外国だなぁ」と感じる。おおらかで大好きな感覚だ。

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雨水をためるドラム缶があったりと、創意工夫と手づくり感いっぱいの

愛情あふれる空間。 

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トマトやナス、きゅうりなどの野菜はもちろん、ハーブやベリー、果樹も

いろいろと植わっていた。

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鶏も飼っていた。

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扉の向こうにも畑スペースがあり、じゃがいもなどが植えてあった。広いと

いうか、ここまでくると広大!まさにハンガリー版ダーチャ。

 

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パスタ、グヤーシュスープ

 

祝日ということで、里帰りしていた息子さんやお孫さんも一緒にお昼をご馳走に

なった。

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ハンガリー名物の揚げパン ラーンゴシュとタマネギの混じったサワークリーム

 

海外に出ると、食べ物の量の多さに胃袋が追いつかない。特に移動がタイトな

仕入れ旅ではグヤーシュ(ハンガリー)やボルシチ(ロシア)などのスープ系、

ブリンチキ(ロシア)などのクレープ系を食べる頻度がぐんと高まる。

ラーンゴシュはハンガリー名物で、おいしいラーンゴシュ・スタンドで

地元の人が列をなしているのを見かけるけれど、油がきついのでめったに

口にしない。この時も、揚げたてを供してくれたのだけれども、小さめのを

ひとついただくので精一杯だった。

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キッチンの様子

 

ラザニアも用意してくれたのだけれども、こちらもお皿に少しだけ

のせていただいた。どの料理も、味付けはとても美味しかった。 

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この生活感ある感じがとてもいい。

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コレクターさんの料理する様子を「何かおこぼれある?」と見上げる可愛い犬。

晩年をこうして過ごすって最高じゃないかと随所で思った。

  

 

小学生と中学生のふたりのお孫さんは、ベルギーへ留学していて英語が

とても上手だった。父親であるコレクターさんの息子さんが、ブダペストまで

車で送ってくれたのだが、何と乗っていた車がSKODA(シュコダ)だった。

シュコダチェコの自動車メーカーで、店に車好きのお客さんが来ると、

このメーカー話で盛り上がることがある。 

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翼と矢が合体した「ウィング・アロー」と呼ばれるシュコダのマーク。

チェコの車にハンガリー語表記のナンバープレートという組み合わせがいい。

現在はフォルクスワーゲン(ドイツ)・グループなので Wマークも見える。

 

こちらが喜ぶと、「シュコダ知ってるの?」と息子さんが驚いた。「日本では

レアな外車だから」と伝えると「こっちではそんな車じゃないよ」とちょっと

恥ずかしそうな表情をした。シュコダというかチェコ製の車に乗っているのは

庶民、中流階級ということらしい。お国変わればということかな。日本じゃ

400万円とかするのにね。

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ブダペストでも中心部の便利な場所にいたのに、なぜあんな田舎での暮らし

 を選択したのか、僕には理解できないんだ」。ご両親が老後に選んだ

菜園生活が、たぶん私より年下の、働き盛りで教育熱心な彼には謎の行動に

みえるんだろうと思った。上を目指して動いていると、下に見える(感じる)

ものも多くなるのかもしれない。 何にせよ、私はシュコダに乗れて幸せだったし

彼とのお喋りも楽しかった。コロナでロックダウンを経験した今の彼なら、

もしかしてご両親の選択がなかなか良いものだったと感じているだろうか。

 

夏至の日のこと、続・ナルシマさん

 

2020年の夏至の日(6月21日)は、日食(アフリカからインド、中国、台湾では

金環日食)と新月が重なる占星術的にも天体的にも珍しい条件の揃う日だった。

(と、ゲイカップル占星術トシ&リティ も言っていましたよと。)

だからかな、夏至の前後 数日間はテンションが上がって上がって、毎日 気心の

知れた友達と会って夜まで話したり、夏至当日は新月で暗く空も曇って濃霧まで

出てきたのに夜ドライブに付き合ってもらったりした。一緒に過ごしてくれた皆

どうも有難う。

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ダーチャの苺。小さな実がなってたまらなく可愛い。

 

朝、夏至の日生まれの友達にお祝いのバースデーメールを送る。夕方、知人から

「念願の環状列石に行ってきました。日食メガネ持っていったけど日食は

見えなかった」というメールが届く。以前、この知人に夏至の朝、とある

環状列石でシューマン共振の音を聴いた話をしたのを覚えていてくれた事が

嬉しかった。

 

今年は夏至の朝にシューマン共振を聴くことはなかったけれど、2020年は

例年よりシューマン共振が大きく響いているそうで、1週間ほど前のちょうど

日の出の頃、眠っていたら耳に振動音のようなものが響いて「あ、これって」

と目を覚まし、体を起こしその音に意識を向けた事があった。環状列石では

意識を向けると共振音が大きくなって、まるでシンギングボウルのように

脳内に音が響いて驚いたけれど、この朝の音は小さいままだった。

 

シューマン共振は、太陽風や雷の放電などの電離層で起こる震動で

シューマン共鳴」とも呼ばれる。なるほど環状列石で聴いた音はまさに

共鳴だったなぁと思う。ふだんはなかなか聞こえないけれど常に観測できる

そうで、昔の人にはもっと頻繁に聴こえていてそれでシンギングボウルの

ような楽器ができたんじゃないかなと空想をする。一度聴くとアンコール

したくなる不思議に魅惑的な音で、はじめて聴いた年の感動さめやらず、

何年か続けて同じ場所へ通ったけれど、二度とあの素晴らしい音を聴くことは

叶わずにいる。

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前日、まるで夏至の前夜祭のように夜遅くまでトーク炸裂したlicaさんがこの日も

ふらっと訪ねてくれて、ふたりで小さな苺をヨーグルトにのせていただいた。

一緒にのせたアップルミントの葉も、その横のアルケミラ・モリスも庭からの

恵み。一年で最も太陽が長く世界を照らす日の、ささやかで寿ぎに満ちた喜び。

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アルケミラ・モリス

 バラ科ハゴロモグサ属

 学名:Alchemilla mollis

 英名:Lady's mantle

 和名:レディースマントル

 

属名「アルケミラ」は Alkemelych(錬金術)という意味のアラビア語にちなむ。

可愛い形をした葉にたまる雫が中世の賢者の石を作るのに用いられたとか、

葉の形が聖母マリア様のマントのようだと表現されたりする。

女性の病気(月経不順、更年期障害、胃腸炎の改善など)に効くことから

西洋では「a woman's best friend」(女性の良き友)という表現もある。

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アルケミラ・モリスの可愛い黄色い花。山みつばの小さな白花やマーガレットと

一緒に玄関に飾る。花器は昔、友達にもらったツェツェの試験管ベース。当時は

この発想、とても斬新だった。

 

 

ところでダーチャには「これがなかったらなぁ」といつも見上げる一本の電柱が

立っている。NTTの電柱で、上には電力会社の電線が張り巡らしてある。この

電柱の線に、樹々の枝葉が触れそうで危うくなっていた。春先、最も危ない枝

だけは頑張って切り落としたのだけれども、チェーンソーは持っていず、木を

まるごと切ることは諦めていた。

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夏至の数日後から、地主さん達が周囲の雑草や樹々の環境整備を始めた。電線に

今にも絡みつきそうなくるみの木のことを話してみたら、皆すぐに「あの電柱の

でしょ」とわかってくれた。そして作業の合間に伐採してくれる事になった。

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チェーンソーの小気味いい音のあと、大木の倒れる様子も圧巻だった。

 

くるみの木と、桑の木と。生えている場所によっては最高の組み合わせなのだ

けれども。桑の木はくるみと樹形が違うのと、蜂よけの手作りトラップ

(ペットボトルにジュースとお酒をブレンドしたもの)をかけるので、

不要な枝のみ切ってもらって残すことにした。この辺りはリスが走りまわるので

くるみの殻がたくさん落ちていてよく芽を出す。そして放っておくとなかなかの

スピードで成長する。

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旧黒岩家住宅側からの長め。木がなくなってとてもすっきりした。

 

地主さん達と旧ナルシマ邸を見ながら話していて、またギンザ洋装店に関する

情報が更新された。洋装店は街中にあり、簾舞からオーナーのナルシマさんが

店まで通っていたと聞いたことがあったのが、やはりそうだったと判明したのだ。

皆さん、洋装店のあった正確な街中の場所も、ナルシマ一族のその後も

知らなかったけれど、これでまたひとつナルシマさんに関する物語が進んだ。

進むとさらに新情報に行き当たるもので。1969年、アポロ月面着陸の年に

宇宙をイメージした『COSMO(コスモ)』という寄合百貨店(百貨店はかつて

こういう言い方をした)が街中に開業した。それまで狸小路商店街や札幌駅前に

あった店がテナントとして入り、その中に「ギンザ洋装店」も名を連ねていた。

 

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ナルシマさんの物語には、今後もひょんなタイミングで続編が届くのだろう。

電線に樹々が干渉する心配がなくなった庭で、大きくなったナスタチウムの花や

バジル、レタスなどのハーブや葉もの野菜を摘み取った。

 

ナスタチウム

 ノウゼンハレン科ノウゼンハレン属

 学名:Tropaeolum majus

 英名:Nasturtium

 和名:キンレンカ金蓮花)、ノウゼンハレン(凌霄葉蓮

 

 

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ナスタチウムは花も葉も食べられる。この日は花をメインにしたサラダ。

 

重なっていてわかりにくいけれど、ナスタチウムの花の下にはバジル、サラダ菜、

銅葉色のレタス3種類が入っている。油断するとどんどん成長してトウが立って

しまうので、この時期は毎日、庭の野菜をせっせと収穫しては炒めたり、生で

食べたり忙しい。でも、こんな忙しさならむしろウェルカムだなぁと思う。

 

ドレスデンのパンクガーデン。あと、YouTube始めました。

 

車に乗ると何だか暑くて、ヒーターが入っているのかとエアコンパネルを

カチカチやったら外気温が出た。26℃だって。北海道にいたらそれは

暑いよ。空は曇って青空ひとつ見えなかったのでまさかこんなに気温が

上がっていたとは意外だった。夏至の日の夜なんて14℃しかなかったんだ

から、とりあえず初夏としては上々かな。

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暑くなると思い出す庭があって、それがここ、ドレスデンのとある

古物ディーラーの倉庫だ。腕にがっつしタトゥーの入ったお兄さんとお姉さんは

体格がよくコワモテで腕っぷしが強そうだ。ふたりとも黄色や青のタンクトップと

ショートパンツという軽装だからタトゥーがより目立つしお姉さんの赤く染めた

髪色が映えている。

ラクタの山が眠る巨大な倉庫と倉庫の間を汗だくで歩く。一見、お宝が

ありそうで心躍るけれど近づくとそうでもないしむしろゴミという期待と失望を

繰り返す。これが古物探しの醍醐味だし、だからこそ‘掃き溜めに鶴’な出物を

掘り出した時の喜びもひとしおというものだ。

 

合間に見つけた落書きだらけのコンクリート壁のペチュニアは、この強烈な

日差しをものともせずに満開の花をつけていた。

 

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壁の錆びた鉄沿いにグリーンが這い、ミニ薔薇が咲いている。壁掛けの

かごの中からは赤いペチュニア。廃材がごろごろ転がる光景はジャンクを

通り越してパンクな空間なのだけれども、すくすくのびのび育つ植物たちは

「僕たち、大事にされてるよ」と喋らずとも、その成長具合で語っていた。

ふと見ると、先程の赤い髪にタトゥーのお姉さんがプランターの植物に

じょうろで水をあげていた。少々、荒くれ者な雰囲気が漂ったって、この庭を

見ればお姉さんの愛情がどんなに深く満ちているかが伝わってくる。パンクな

空間と愛される植物たちという構図はまるでこの真夏の太陽のように

明るくコントラストが強かった。

 

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別のコーナーでは、ナスタチウムものびのびしていた。

 

ドレスデン(Dresdene)はドイツ東部ザクセン州にある古都で、東西に

ドイツが分断されていた頃、東側だったエリアだ。(東がソビエト側、西が

アメリカ側)30kmほどでチェコの国境という立地、街を流れるエルベ川

沿いに真冬でも蚤の市がたつ。そんなわけでDDR東ドイツ)ものを求めて

訪れた夏の日の一コマ。ロシアを訪れるようになり、めっきりドイツを

まわることはなくなったけれど、このパンクな庭のことはきっと一生、

忘れないし、今年もあのお姉さんはクールに植物たちの面倒をみているだろう。

 

 

あと、YouTube始めました。


Introduction; дача ダーチャのある暮らし

 

私のダーチャに きのこ と こびと はマスト=つきものなのだけれど、

ドイツでもよく「きのことこびと」のオブジェやアイコンを見かけた。

ちなみにこのラブリーな瞳のこびともドイツ製だ。

 

ちょうどマーガレットが花盛りの頃に撮ったのでムービーも

マーガレット押しになっている。音楽も友達がつくってくれた。

手づくり感満載のyouTubeムービー、よかったらのぞいてみてね。

 

 

Solo Solo Shanti ソロ・ソロ・シャンティ

 

閉じかけたオリエンタルポピーの花は三角形をしている。

 

つぼみが大きく少しずつ花びらの開く様子を眺めることのできるこのポピーには

先日のシャーレーポピーのような「ある日とつぜん感」がなかったりする。

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 オリエンタルポピー

 ケシ科ケシ属

 学名:Papaver orientale

 英名:Oriental Poppy

 和名:鬼芥子・鬼罌粟(どちらもオニゲシと読むけれど、後者の漢字の真ん中の

    文字、初めて見た)

 

 

雨模様だったけれど、仕事が一段落したので海へ行くことにした。コロすけ自粛

期間中からずぅっと行きたかった石狩の浜辺。ここはハマナスなどの海浜植物が

自生していて、その種類は180種に及ぶ。波の音を聴きながら海浜植物の間を

ぬうように歩くのがいいし、石狩川日本海が合流するポイントなのもいい。

車で1時間ほどの距離は気分転換のドライブに最適だし、以前、もっと近くに

住んでいた時は真冬にも訪れていた。春夏の快晴のもと点在する海浜植物の花を

鑑賞するのも、秋に強風で波の轟くのも、冬の雪に閉ざされ険しい感じも、どの

季節に訪れてもこの場にしかない魅力がある。 

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家から遠のくほどに小雨になり、海が近づくにつれ雨脚は弱まっていく。そして

到着する頃には完全に雨はやんでいた。車をおりると湿気を帯びた潮の香りが

漂っていて、遠くで波の音が心地よいリズムを奏でる。日はすでに暮れかかって

いたけれど厚い雲に覆われた空の濃淡を帯びた藍色が美しい。

 

浜辺へ出ようと歩いて行くと、ちょうど道の先にワゴン車が停まっていた。

工事車両が何か作業をしているのか、すべてのドアが開け放たれている。

何にせよその車の横を通らないと浜辺へ出られない。近づいて行くと女性の、

英語の話し声。誰かと電話しているみたいだ。いきなり車の脇に現れた私に

彼女も驚き、でも私ひとりな事に安堵したようだった。その間にも、今日という

日を照らした陽光はすでに姿を消しかけている。「こんばんは」と通過する

だけの意思を示して浜へ出た。

 

海は凪いでいた。陽が海の向こうへ完全に沈み、辺りの判別がつきにくくなる。

遠くで灯りがきらめいている。波は一定のリズムで浜と沖とを行き来している。

何にもじゃまされることのない、穏やかで静かな時間。もう10年以上も前になる

けれど、車中泊旅行で北海道へ来た友達夫妻を案内しがてらこの浜辺で

バーベキューした時の光景がふと蘇る。ふたりはその後、紆余曲折あって

別れてしまったけれど、あの日ここですごした楽しい時間は永遠に、そのままの

形で記憶の箱の中にある。

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暗い中で撮ったのでふしぎな写真になった。

  

海と川が合流する場所へ移動しようと再度、ワゴン車の脇を通る。この時に女性と

会話を交わした。1週間前、東京から飛行機で北海道へ入り車をレンタルして

道内を旅している最中という。「Covid-19で大変じゃなかった?」と聞くと

「ちゃんとマスクしていれば問題なく」とのこと。ワゴン車をレンタルして

車中泊しながらひとり旅するなんて、何て素敵な。しかも海に面したこの場所で

プライベートビーチを堪能する選択。「Cool! I like your style」と告げると

嬉しそうに微笑む。それよりも何よりも。まさかここで誰かと会うなんて想像も

していなかった。かなり驚いたと言うと彼女も「Me too!」。お互いに Solo

(ソロ、ひとり)で動く身軽さが引き合わせたのかもしれないという旨を話す

語彙力がない。「ひとり旅は何かしら思いがけない楽しいハプニングをもたらす」

とりあえず知っている単語を並べ、ニュアンスで伝える。東京で暮らして1年に

なるという彼女はカナダ人で、たぶんこのくらいのやりとりに慣れている。

 

「お名前は?」こう聞かれる時いつもアーシュラ・ル・グインの『ゲド戦記』の、

「本当の名前は信頼できる間柄でしか交わし合わない」という魔術師同士の

しきたりのシーンを想起する。ゲド戦記では「自分自身の本当の姿を知る者は

自分以外のどんな力にも利用されたり支配されることはない」ともいう。

 

本当の名前、ホーリーネーム。さて。この世界で自分に与えられた本名という

ものは、果たして真実の名なんだろうか。名乗るというほんの束の間の

時間にもつい考えてしまう。そうしたら、彼女が先に自己紹介した。

「I'm Shanti」。「シャンティ?まるでインドの響き」と返すと「本名の音が

呼びにくいので、普段は皆にこう呼んでもらっているの」と言った。

シャンティはヒンドゥー語で「心の平安、寂静、内なる平和」を表す。

穏やかな口調の彼女らしい、なぜかホーリーネームだと思った。根拠がまったく

ないのだけれど名前を教えてもらった時、今日このタイミングでここを訪れた

理由がわかった気がした。