青いトマトの美味しい食べ方

 

爽やかな秋晴れだなぁなんて空を見上げる横で雪虫が舞う季節になった。

この辺りは冷え込みがきつい。初雪のニュースも聞こえてきたし、そろそろ

冬タイヤへの交換時期を考え始めている。 

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一見まだ青々として見える庭の植物も、ぎぼうしの花が終わると秋明菊が咲き、

タカノハススキが遅まきながら穂を広げる。紫蘇やアスパラガスは来る年に向けて

種をつけ、一年草宿根草もちゃぁんと季節に沿って順々にたち枯れていく。

 

そろそろここも片付けないとと、大きくなったブラックベリーの向こうに

隠れんぼしながら広がる野菜畑を見る。明らかに役目を終えた茄子苗にお礼を

言って土から抜き取る。この苗が大地にとけあい堆肥になって、新しい苗の

栄養になる。循環してるんだなー。

 

ただひとつ。これだけ寒いと、もう赤くなることはないとわかっているのに

青く実ったミニトマト苗を引き抜く気にはどうしてもなれずにいる。このままじゃ

固いし、でもせっかくここまで実ってるんだし。だから青いトマトを美味しく

食べる方法があると知った時、空也上人よろしく心の中で小躍りした。

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トマト

 ナス科ナス属

 学名:Solanum lycopersicum

 英名:Tomato

 和名:赤茄子、小金瓜、蕃茄(ばんか)、唐柿(とうし)、

    珊瑚樹茄子(さんごじゅなす)

 

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レシピはいたって簡単で、収穫した青いトマトをグリルやオーブンで焼く。

これだけ。

 

焼きたてトマトに、オリーブオイル、塩、胡椒、タイムやイタリアンパセリ

味付け。春、ロッソナポリタン(赤)やイエローアイコ(黄)など

いろんなトマトを植えたので、種類によっては焼き銀杏のような食感になった。

青いトマトの美味しい食べ方。調理方法がシンプルでワインにもよく合うし、

この方法を知ったおかげで、青いトマトがあったら「季節はずれだなー」

なんて思うどころか「ラッキー」って思うようになった。小さなことだけど

見え方が好転するのってほんと嬉しいよね。

 

c-dacha.hatenablog.com

 

そういえば、トマトの原産は南米・アンデス山脈にあるペルーやエクアドル

といった国々だ。この辺りの民族衣装はカラフルでとても可愛い。つばの広い

帽子に三編み、カラフルなフレアスカートのいでたちを写真集などで見かける

人も多いのではないかなぁ。アンデスへ行ったことはないけれど、よく

LINEする れいこちゃんという友達がペルーで暮らしていたのでちょっぴり

親近感がある。 

 

れいこちゃんとは東京にいた頃、知り合った。ショートカットの小柄で

キュートな女性で、落ち着いた心地よい話し声が印象的だった。英語が堪能で

彼女の話す声を聞いていると自然と穏やかな心持ちになる。声をツールに

人の周波数を調整するボイスヒーリングというのがあるそうだけど、

れいこちゃんのような人はまさに、声で人をカームダウンする存在なんだ

ろうな。 

お互いのタイミングで自由にメッセージを送りあうラフな感じ、通じ合っている

感覚。コロナ禍で自粛生活を余儀なくされたこの春も、彼女との楽しいやりとりが

閉塞感を癒やしてくれた。

 

すっかりマスクすることが定着して、咳エチケットとかソーシャルディスタンス

なんて言葉が普及したおかしな2020年だけれども、今年も秋は深まっていく。

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半信半疑のリアル、生田神社の水みくじ

 

突然だけど。もしも宿泊しているホテルでいきなり警報が鳴り響き

「火事です、火事です。9階で火災が発生しました。速やかに避難してください」

というアナウンスが流れたら、あなたはどうするだろうか。

 

その朝、早めに仕事へ行く予定だった私はまず出鼻をくじかれて

「えー、困っちゃうなー」と思った。それからここが10階であることを

思い出し、「火事って真下の部屋かも?!」と想像したとたんに足もとが

熱くなった気がして一瞬たじろいだ。でもきな臭さがないなと思った

とたんに熱さは消え失せた。ドキドキと鼓動は早まる。焦る気持ちも

あるのだけれど、響き続ける警報とアナウンスを聞いていたらなぜだか

「これほんとかなぁ」という思いが大きくなった。

 

とりあえず、火災だというのだから部屋を出ようか大事な物だけ持って、と

気を取り直したら、鏡に、だらしなくはだけた浴衣姿の自分が写った。

私物の部屋着もあったけれど、そうか昨日はホテルの浴衣で寝たんだった。

響き続ける警報とアナウンス。目覚ましだったらとっくに消してるのにと

思いながら体だけは慌てて着替えした。そうしたら、スーツケースに

詰め込めるだけ自分の物を詰め込みたくなった。動揺のあまりの行動だった

のか、この火災警報をどこか半信半疑で聞いていたからなのかよくわかない。

とにかく目に入る私物をどんどんスーツケースに入れていった。いつもは

ゆっくりしているけれどこの時はかなりのスピード感。無駄のない動作に

やればできるんだなぁなんて感心しながら、洗いものの下着や靴下の片方まで

愛おしくなり、結局すべての荷物を詰め込みスーツケースと共に部屋を出た。

 

スーツケースを転がしながらエレベーターへ向かった時点でやはりこの

リアルに対して半信半疑。輪をかけて、廊下の向こうで年配のご夫婦が

エレベーターを待っていたのも火災発生の現実味を薄めた。エレベーターに

着いた所で「確認致しましたところ、火災は発生していませんでした。

どうぞご安心ください」的なアナウンスが流れた。「えぇー、ほんとに

ドッキリだった」と思ったそのタイミングでエレベーターから

昭和50年代のSF&アニメーション研究会員のような格好をしたお兄さんが

飄々と現れた。「火事じゃなかったんですかね」と声をかけると、はははと

涼しい顔で「大丈夫だったみたいですね」とこともなげに部屋へ入って行った。

エレベーター前にいたご夫婦は、別の階に宿泊している家族がこの騒動で

鍵を中に置いたまま廊下に出て部屋に入れなくなったそうで、やれやれと

いう顔で階下へおりて行った。そのエレベーターから出てきたホテルの

スタッフは「お騒がせして申し訳ありませんでした」と平謝りだった。

 

仕切り直して出勤しようとエレベーターに乗ると、途中の階でイタリア人と

おぼしき男性が乗ってきて、困り顔で「(火災騒ぎ)大丈夫だった?」と

聞いてきた。マスクで顔が半分隠れているとはいえ、明らかに普段は陽気な

表情をしていることが目の周りの表情筋から伝わってきて、あぁさすがの

イタリア人も今朝の騒動には辟易としたんだなと思った。ホテルという

場所柄、実にいろんな人が宿泊している。神戸には催事の出張で来ていて、

ホテルには偶然ふたりの同業さんが泊まっていた。10階と13階に宿泊していた

ふたりは火災騒動の時すぐに非常階段から外へ避難し、けっこうな数の人が

小雨の降るなか外へ出たそうだ。中には裸足の人もいたという。私の姿が

見えないことから「気づかず寝ているのでは?」「まさかスーツケースに

荷物を入れてたりしないよね」と話していたら本当にそうだった上、

スーツケースを持ってエスカレーターに乗ろうとしたので一緒に話をしていた

同業さん皆から「そんなことしてたら、しまくま堂じゃなく黒焦げ堂に

なっちゃうよ」と言われ爆笑した。同業さんの話によると外に避難していた

人たちへの説明が何もなく、どうなってるんだろう?とフロントへ行くと

普通に朝のチェックインをしていて唖然としたそうだ。そもそもこの騒動は

9階の宿泊客が、喧嘩の挙げ句に火災警報器を押してしまった事が理由だった。

誰もがきつねにつままれたような朝だった。この出来事から、緊急時には

スーツケースに荷物を入れるなんて悠長なことはしないこと。

エレベーターではなく非常階段を使うこと。このふたつを学んだ。

  

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 そのホテルの窓から見えた生田神社。

 

生田神社は神戸・三宮にある観光名所。神社のそばなので静かだと思っていたら

実際は繁華街がすぐ近く喧騒のエリアだった。朝、お参りする人の姿が多いのは

もちろん、夜でもパンチパーマにサングラスの男性と金髪の女性のカップルが

深々と頭を下げてお参りしていて、この場所が日常に溶け込んでいるのを感じた。

 

生田神社の御祭神はワカヒルメさん。安産、縁結び、商売などにご利益があると

されている。ワカヒルメはアマテラスの妹だとか、同一神ではないかとかいろいろ

言われる謎の神。機織りをする女神で、機織り小屋にスサノオが馬を投げ込み

驚いて死んでしまったという。神話には、何のメタファーなんだろう?という

ふしぎな話が多い。生田神社の境内にはヒルコをまつった社もあった。

ヒルコはイザナギイザナミが国産みをした最初に産まれた神。この神社では

エビスさんとして祀ってあった。

 

ikutajinja.or.jp



水みくじ、やってみました。

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水に浸して占う‘水みくじ’というのがあると知り、やってみた。300円。

総合恋愛運て。水みくじは縁結び押しらしく、この1種類しかなかった。

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生田の森という奥の小さな森にある水辺で、このおみくじを浸すと。

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言葉が浮かび上がってくる。

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ははは。『吉』でした。

 

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水みくじの奥には小さな稲荷神社。白狐の絵が可愛かった。

神戸は震災のあと復興しているのでこのお社もきれいに立て直してあった。

 

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連日30度越えの神戸に滞在中、通った道に咲いていた朝顔。紫色がきれいだった。

 

 

サプンツァ、そこは死を明るく変換する場所。

 

ソフィアの墓地近くで開催される蚤の市を訪れた折、現地到着までずっと

墓場鬼太郎’という名が脳裏を踊り続けた。墓地からすぐの場所にたつ市。

玉石混交の蚤の市の性質を思うと絶好の会場とも思えるし、これが台湾の

ように夜にたつ市だったら、果たして冬の宵にひとりで出かけられたか

どうか。ちょっぴり諸星大二郎の漫画『諸怪志異』に出てくる見鬼(霊が

見える人)の‘阿鬼’くんになった気分で、明らかに狂犬病で狂った目をした

野良犬のいる早朝のソフィアの街角、地元の人たちに混じって墓地行きの

バスを待った。

 

墓地へ行ったことを記そうと思ったら、脳裏にぼわぁとブルガリアの光景が

思い出された。それで記してみましたが、今日の本題はルーマニアでやんす。

  

シゲトゥ・マルマツィエイ(Sighetu Marmaţiei)はウクライナとの国境にある

ルーマニア・マラムレシュ県の地方都市だ。ここから車で約18km のところに

『陽気な墓』として世界中のガイドブックに掲載される‘Săpânța(サプンツァ)’

村がある。

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シゲトゥ・マルマツィエイの交差点。サプンツァ村は近い。

 

サプンツァ村の『陽気な墓』は、英語では ‘Merry Cemetery’(メリー墓地)と

表記される。通常、墓地には暗い、辛気臭いイメージがつきまとうものだが、

ここは噂通り、いやそれ以上に明るかった。

www.atlasobscura.com

 

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ルーマニアの旗がはためく、陽気な墓地の入り口。

 

6月、旅行に最適な時期だったこともあり墓地周辺にはルーマニア国内はもとより

ドイツからのバイクツーリング、EU圏ナンバーの車も見かけた。

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快晴の青空のもと、陽気な墓たちに囲まれ佇む教会。緑色にルーマニアンカラーの

タイル装飾が美しい。

 

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馬を飼っていた人、戦死した人、農機具の事故で亡くなった人。

 

サプンツァのお墓は鮮やかな青色がベースカラーになっている。三角屋根に大きな

十字架、その下に故人の絵とひとりひとりのストーリー。そして故人が眠る

スペースには思い思いの花やハーブが植えてある。日本だと、お供えには切花が

一般的だけれども、サプンツァではマリーゴールドが植えてあったり、花壇の

ようになっているのが印象的だった。植木鉢を置いているお墓もあった。

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植樹している人、料理している人。糸を紡いでいる人の絵が多いのが、いかにも

羊と共にある暮らしを営むマラムレシュの人々という感じ。

 

 

この墓地の始まりは1935年。Stan Ion Patras(スタン・イオン・パトラシュ)と

いうひとりの村人が、故人の生前の職業や暮らしぶりを絵にした木彫りの墓標=

お墓を作ったことに由来する。

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22番、丸い黄色のサインボードがついているのがパトラシュさんのお墓。

彼の死後、この偉大な仕事は弟子が受け継いでいる。

 

 

初代パトラシュさんが手掛けたお墓は、弟子が手掛けたものと違って細工が丁寧で

技巧的だ。全体におおらかというか、ゆるいというか。味のある絵のタッチが、

ここを訪れる者を何とも朗らかな気持ちにしてくれる。

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生前、糸紡ぎしていた人のお墓。絵の下には故人の生前のエピソード、特徴などが

記されている。

 

カラフルな彩色、ユニークな絵画がここまで並ぶと、墓地という概念が覆されて

もはやアウトサイダー・アートの域である。

 

「お料理が好きな人でした」とか「手先が器用でいつも編み物をしていました」

など、故人の生前の暮らしぶりを描いたお墓。車にはねられた人の絵が描いて

あるのは交通事故死、病院で亡くなった人には病室のベッドで横たわる絵と

いうように、各人の死に様がそのまま描かれたお墓もある。

絵の下のストーリーはルーマニア語で、中には「私は毎日お酒を飲んでいたので、

それが死因です」とか「皆さん、彼女の墓前ではお静かに願います。大声を出すと

この恐ろしい姑が起きてしまうかもしれません。どうか彼女を二度と起こしません

ように」などブラックユーモアたっぷりのメッセージが記されているものもある。 

 

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かなり年季の入ったお墓。 屋根や十字架の装飾の赤い花模様が可愛い。

 

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地元の名誉村民のお墓は肖像画(ブロマイド)方式を採用。観光客としては、

背広姿よりマラムレシュ地方の民族衣装を着ている肖像画の方がやっぱり嬉しい。

 

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この人は生前ずっと織物をしていたのだろう。マラムレシュ地方で見かける赤いラインの入った織物、黒と白のボーダー柄の毛糸靴下など、細部まで機織りの様子がとても美しく描かれていたお墓。

 

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百合の花が盛りだった。青いお墓にオレンジ色が明るく映えていた。

 

母を看取ったあと、しばらく放心状態で、その後、後悔や自責の念がぐわぁと

押し寄せた。そのすべてが自分勝手な思い込みによるものだったと気づくに

つれて母への想いは昇華して、空気中に舞う彼女の断片は微粒子となり、常に

祝福として降り注ぐのだと知った。最愛の人との別れを経験した者にしか

わからない、えぐられるような心の痛み。それも自我だったと気づいた

タイミングでの訪問となった。

 

死というものをまっすぐに捉えると、こんなに慈愛あふれたユーモラスな

視点も宿るのか。幼くして我が子を失った人の悲しみも、大往生でこの世を

去った人の喜びも、すべてを等しく、朗らかに内包する。

サプンツァ、ここは死を明るく変換する場。

 

キャベツカッター出番なし。ソープワートはサボン草。

 

ようやく夏らしい気温になった。寝苦しい夜はまだ一度もないけれど「暑いなぁ」

って言って扇風機を使えることが嬉しい。少しでも肌寒くなると「今だ!」と

言わんばかりにダウンを羽織る南国の人のように、少しでも暑さを感じると

ノースリーブやショートパンツと俄然、夏仕様になる北国の人たち。だって、

薄着を楽しめる期間が短いんだもん。そんなわけで私も鮮やかなブルーに

ポルカドットの夏用部屋着をようやく着れて喜んでいる。

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窓辺から見えるダーチャのようす。すっかり緑の世界。

 

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ソビエト時代のキャベツカッター

 

本場・ロシアのダーチャではかつて(現代のダーチャはいわゆるイングリッシュ・

ガーデンを楽しむスタイルが主流だとか)ロシア料理に欠かせないキャベツも

たくさん育てていたそうだ。これはソビエト時代のキャベツカッター。

ロシアの古都・サンクトペテルブルグを訪れた折に見つけたもので

「キャベツ専用カッターってあるんだ」と感心したのを覚えている。ちなみに

うちの紫キャベツは2株とも、人の口に入る前に、見事なまでに虫に食べられ

キャベツカッターの出番なしだった。

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いろんな銅葉レタス、パセリ、ナスタチウムの花

 

食糧危機の近未来がささやかれる中、そんなゆるい事でどうするんだ。霞を

食って生きる仙人にも‘不食’にも到底なれそうにない私は一体、何を食べて

生命をつなげば良いのだろうか。なんて苦悩する暇なく、庭ではレタスや

ナスタチウムがどんどん育つ。油断しているとトマトやピーマンが実りの

ピークを迎える。

自分で育てた野菜を収穫する行為。それ自体が恩寵というか、豊かな気分を

運んでくる。充足感、満足が広がると、不安に耳を傾ける時間が減る。

食事情としては質素かもしれないけれど、この満ち足りる感覚は、禅の

「足ることを知る」に通づると思う。何よりこの行為自体が楽しい。

迷ったら楽しい方を選択して、「楽しい」とか喜びの連続でこの世界を

渡って行こう。そうして過ごす人が増えたらいいななんて、こういうのも

ユートピア思想っていうんだろうか。

 

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ソープワート

 ナデシコ科シャボンソウ属

 Saponaria officinalis

 英名:soapwort

 和名:しゃぼんそう(シャボン草)、サボンソウ

 

ピンク色の、可愛くて芳しい花をつけるソープワート。「シャボン草」とか

「サボンソウ」とも呼ばれる。‘サボン’はフランス語だとずっと思っていた

けれど、ヘブライ語イスラエルの言語)でも「SAVON」(サボン: 

意味も、石けん)と呼ばれていると知り、言葉って伝播(でんぱ)するよ

なぁって思う。この可愛いお花、最初は1株だけだったのが、どんなに辛く

厳しい冬の年も耐え、あれよあれよと増えて‘大株主’になった。当初は珍しさ

と「もったいない病」で抜かずにいたけれど、まるでアップルミントのように

して他の植物を駆逐して勢いよく増える姿はもはや勢力拡大する一方の、

手のつけられない暴れん坊ギャングと一緒。英語圏のサイトで検索をかけても

「とにかく強い」「路傍でもよく増える」の表現が圧倒的に多い。

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と言うわけで。増えた君達が持つ成分‘サポニン’は有難く石けんにするよ。

 

根は毒性が強いというので使わずに、収穫した茎と葉を煮出して石けんとして

活用する事にした。煮出し(煎じ)時間の関係か?泡立ちはいまいちだけど、

緑色の液体になった。

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この緑色が繊維に移ってしまう場合ありと言うことで、キッチンクロスなど色移り

して良いものを洗うことにした。英語サイトでは「アンティークリネンを洗うのに

最適」とか「古いウールの織物を洗う」という表記が多く目につく。石けんや

洗剤が普及する近代まで、サポニンを含むこの植物の洗浄力がどんだけ重宝されて

いたかを伺わせる。

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芳しく可愛らしいパステルピンクの花。

学名‘saponaria’の‘sapo’はラテン語で「石けん」の意味。明治時代には日本に

入っていたそうで、明治ってどんだけ文明開化?!って思う。葉を揉むだけでも

泡立つけれど、わりと肌が強い私の手でも煮出す前の葉には刺激を感じるので、

肌が弱い方は用心しながら少しずつ触ることをおすすめする。

 

 

 

健胃を願ってミント・ブラザーズ

 

夏至が過ぎ、(北海道は8月だけど)七夕が過ぎ、存分に日光を浴びたおかげで

茂って、繁って。庭のハーブがすごいことになっている。ので最近は、時間を

見つけては旺盛な彼らを刈り取り水洗い、ドライにしたり、ウォッカやビネガー

(酢)に浸ける作業に取り組んでいる。

 

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ブロンズ・フェンネル(銅葉茴香)。ビネガーに浸けるため、収穫。100円SHOP

で見つけた猫の蚊取り線香ホルダーはまだ出番がないけれど、そこにあるだけで

フォトジェニックなゆるキャラ存在感。にゃごむ。

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ワームウッド(ニガヨモギ)。こちらはウォッカに浸け込む予定で収穫。ヨモギ

さらに強くなったようなパワフルな香り。シルバーリーフが美しい。

 

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これはハーブのレディース・マントルの園芸種、アルケミラ・モリス。園芸用

なので薬効はないそうだけど、葉の形、小さな黄色い花の姿がとても愛らしい。 

 

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こちらは園芸種、青いデルフィニウム。もう終わりがけの花姿も美しく、ブリキの

じょうろでさいごまで観賞させていただくことにした。

 

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こちらも園芸種、ニゲラ。ちょっぴり時計草のような花。花芯の形も素敵。

 

 

そして。この庭で、最も威勢の良いアニキ達(*もちろんアネキもいるけれど、

昨今すっかり少なくなった、男気ある人々へのオマージュに、あえての

アニキ呼ばわりで)。それがミント・ブラザーズ。

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向かって左から、アップルミント・ペパーミント・スペアミント

 

ミント

 シソ科ハッカ属

 学名:Mentha.L

 英名:Mint

 和名:薄荷(ハッカ)

 

環境が気に入ると、土中、地下茎(ランナー)を伸ばしてどんどん繁殖する

ミント。厳冬の北海道でも容易に越冬し、毎年、旺盛な生命力で増え続ける。

油断するとランナーが森まで行ってしまう=走っちゃう、ので、庭の中では

おおらかだけど森にだけは走って行かないよう気をつけている。育てた経験の

ある人は皆さん顔をくしゃくしゃにして「あー、ミントかー!」とおっしゃる。

そのたび「あ、この人も増やしちゃったんだ」と微笑ましい気持ちになる。

 

さすがはメントール(Menthol)含有量が高いだけあって、香りの清涼感と

爽やかさは天下一品だ。しかも健胃効果がある。私はもともと胃腸が弱く、

寄る年波(としなみ)には勝てないというわけで、今年は素直にミント酒の

お世話になろうとウォッカに浸けることにした。いつぞや「庭には、その家の

人にとって必要な植物が多く育つようにできている」と聞いた言葉が、まぁ

ミント軍団(もはや、ブラザーズでは済まない域に達したもよう)はかなりの

確率で繁殖する庭が多いとは思うんだが、案外、的を得ていると感心したことが

ある。きっとブラザーズの旺盛な生命力は、胃腸の弱い私への彼らなりのエール

なのだ。もともとウォッカの味がきらいじゃないのと虫除けとしても使いたいので

甘味(砂糖)はいれない。形から入るタイプとしては「やはりウォッカといえば

ジャケット(パッケージデザイン)の素敵な‘クバンスカヤ’だろう」という事で、

御覧ください、白馬にまたがる黒いマントのコサック兵、背景の鮮やかな赤。

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日付と内容がわかるように表記して冷暗所へ入れた数日後。ちょっと色づいている。

 

スペアミント

 シソ科ハッカ属

 学名:Mentha spicata

 英名:Spearmint

 和名:ミドリハッカ、オランダハッカ

 

ミントを入れたカクテル‘モヒート’で使われるミント。殺菌、健胃作用。

 

 

ペパーミント

 シソ科ハッカ属

 学名:Mentha piperita

 英名:Pepparmint

 和名:西洋ハッカ、胡椒ハッカ

 

健胃、発汗作用。

 

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こちらは料理用にとビネガー浸け。メインはアップルミント、少しペパーミント。

 

アップルミント

 シソ科ハッカ属

 学名:mentha suaveolens

 英名:apple mint、woolly mint、round-leafed mint

 和名:丸葉薄荷(マルバハッカ)

 

葉がぷっくり厚くフルーティな香りのするミント。整腸、殺菌作用。

 

 

匂天竺葵、コウノトリ、アリマキ

 

明日、庭で寄植えWSが開催されるというのに豪雨になった日。

お願いしていた外看板を仕上げてもらったので「楽しくしてたら何とかなるかな」

マインドで、全身で雨を受けながら看板をとりつけた。

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それが功を奏したのか、はたまた晴れの性質をもつ方々が集ったからか、

いずれにせよ当日は、昨日の豪雨が嘘のような爽やかな快晴の1日になった。

 

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マーガレットとアカツメクサシロツメクサの花々が咲く、何てファンシーな

光景。子供の頃、こういう風景みながら通学したよねというノスタルジー

仲良しだったむっちゃんと、可愛いお花やきらきら光る小石に魅了されて

学校までなかなか進まず、いつもふたりで遅刻していたことが思い出される。

懐かしさが記憶の扉をこじ開け蘇ってくる。感情が動く。ここを「エモい」と

表現する人の多い一因なのかもしれない。

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ガーデンショップ GreensBeeさんを講師にお迎えして、ハーブの寄植えWSを開催

頂いた。「寄植えの植物はすべてハーブで、プランターは土に戻る紙製で」という

こちらの意向を叶えてもらった形だ。

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蒸留器をもっている人、園芸に手慣れている人、ハーブの知識がある人。

いろんな方が参加してくれた。どことなくソーシャルディスタンスをとり、

マスクとビニール手袋必須なところがビフォー・コロナでは想像していなかった

新習慣。 

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GreensBeeさんにもうひとつマストでお願いしてあった、ニオイゼラニウム

得も言われぬ芳しい香りがある。フレンシャムレモン・斑入りレモン・

ローズ・ストロベリー・ジンジャーと、何と5種類ものニオイゼラニウム

揃えてくださった。北海道では越冬しないけれど、乾燥に強く暑中の寄植えに

向く。アロマテラピーローズゼラニウム精油はこのハーブで、はちみつに

葉を入れておくととても良い芳香になり、葉の形も花の色も可愛い。

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ニオイテンジクアオイ

 フウロソウ科テンジクアオイ属

 学名:Pelargonium graveolens

 英名:Rose geranium

 和名:匂天竺葵

 

原産は南アフリカで「Pelargonium(ペラルゴニウム)」の名前でも流通する。

ペラルゴニウムの由来はギリシャ語の‘Pelargos’で、コウノトリのことだ。

コウノトリを初めて見たのはスペインで、その大きさに度肝を抜かれた。

ルーマニアで見かけた時に、コウノトリは人里で営巣すると教えてもらい、

それで電柱の上に巨大な巣を作るのかと合点がいった。ペラルゴニウム

の種子がコウノトリのくちばしのように長細いからこう呼ばれるようになった

そうで、学名とかいうと小難しい感じがするけれど、由来を知るとけっこう

原始的というかシンプルな感覚なんだよなぁと、点在する自然の魅力で

なかなか学校にたどりつかなかった子供時代を重ね合わせて正当化してみたり

する。ちなみに‘graveolens’には「重い香り」という意味がある。あーわかるなぁ

と思う。嗅ぐと納得なんだけど、ニオイゼラニウムって芳しくて、香りに重厚感

というか、重みがある。

 

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GreensBeeさんに頂いた寄植えポット。漂う芳香にこびとのおじさんも嬉しそう。

 

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楽しく夢中なじかんはあっという間。皆が帰ったあと、サーブしたレモンバーム

ミントのブレンドティーでひとり余韻に浸っていたら、おいしいものメンターの

ポカリさんが来て「外に人形が置いてあると思ったら動いてびっくりした!」と。

外で人の形。ポカリさん、それはきっと、私に化けた案山子です。 

 

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 これが動いた人形、簾舞の案山子です。

 

寄植えWSの時、庭のワームウッド(ニガヨモギ)を一緒に見ていた人と

たくさんのアブラムシが茎についていて、そこにせっせとアリが来る様子を

眺めた。そして「アリってアブラムシが好きなんでしょうね」と少し呆然と

なりながら話した。数日たって、ワームウッドのアブラムシがひどい茎だけ

カットしようとしたら、あれ。アブラムシのついた茎が少なくなっていた。

アリが食べちゃったのかと思ったら、アリはアブラムシが出す甘い排泄物が

大好きで、アブラムシを天敵から守っていると知る。相変わらず、せっせと

アリは働いて=歩きまわっている。アブラムシの別名はアリマキだそうだ。

庭で起こる共生関係。

 

 

ハンガリー・ブダペスト郊外の菜園生活

 

じっとしていても自然と汗ばんでくる真夏日に、ブダペストから車で

1時間ほどの郊外で暮らすコレクターさん宅へおじゃましたことがある。

ピンク、白、赤の可愛いゼラニウムが「ウェルカム!」って感じで出迎えて

くれて感激した。

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アンティーク好きが嵩じて収集家兼ときどきディーラー的な活動をしている

人の友人と、数年前に蚤の市で知り合ったことがこの訪問のきっかけだった。

その友人女性が彼女を紹介してくれて、‘聖イシュトヴァーンの日’という

ハンガリーの祝日に「何も予定がないから」とコレクションを見せてもらえる

ことになった。

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コレクションルーム前にもたくさんのゼラニウム

 

長くブダペストで暮らしていた初老のご夫婦。仕事が定年になったのを機に、

夢だった自給自足的ライフスタイルを送れる郊外の中古物件を購入、数年前、

便利な都会から田舎暮らしへと生活をシフトチェンジしたそうだ。

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奥に見える白い建物が住居で、あとはけっこうな広さの庭になっている。

この辺り一帯、同じような住宅が並んでいてどこも広い庭がついていた。

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樹々の間に渡した洗濯紐に洗濯物が無造作にかかる。こういう光景を見る

たび「外国だなぁ」と感じる。おおらかで大好きな感覚だ。

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雨水をためるドラム缶があったりと、創意工夫と手づくり感いっぱいの

愛情あふれる空間。 

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トマトやナス、きゅうりなどの野菜はもちろん、ハーブやベリー、果樹も

いろいろと植わっていた。

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鶏も飼っていた。

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扉の向こうにも畑スペースがあり、じゃがいもなどが植えてあった。広いと

いうか、ここまでくると広大!まさにハンガリー版ダーチャ。

 

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パスタ、グヤーシュスープ

 

祝日ということで、里帰りしていた息子さんやお孫さんも一緒にお昼をご馳走に

なった。

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ハンガリー名物の揚げパン ラーンゴシュとタマネギの混じったサワークリーム

 

海外に出ると、食べ物の量の多さに胃袋が追いつかない。特に移動がタイトな

仕入れ旅ではグヤーシュ(ハンガリー)やボルシチ(ロシア)などのスープ系、

ブリンチキ(ロシア)などのクレープ系を食べる頻度がぐんと高まる。

ラーンゴシュはハンガリー名物で、おいしいラーンゴシュ・スタンドで

地元の人が列をなしているのを見かけるけれど、油がきついのでめったに

口にしない。この時も、揚げたてを供してくれたのだけれども、小さめのを

ひとついただくので精一杯だった。

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キッチンの様子

 

ラザニアも用意してくれたのだけれども、こちらもお皿に少しだけ

のせていただいた。どの料理も、味付けはとても美味しかった。 

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この生活感ある感じがとてもいい。

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コレクターさんの料理する様子を「何かおこぼれある?」と見上げる可愛い犬。

晩年をこうして過ごすって最高じゃないかと随所で思った。

  

 

小学生と中学生のふたりのお孫さんは、ベルギーへ留学していて英語が

とても上手だった。父親であるコレクターさんの息子さんが、ブダペストまで

車で送ってくれたのだが、何と乗っていた車がSKODA(シュコダ)だった。

シュコダチェコの自動車メーカーで、店に車好きのお客さんが来ると、

このメーカー話で盛り上がることがある。 

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翼と矢が合体した「ウィング・アロー」と呼ばれるシュコダのマーク。

チェコの車にハンガリー語表記のナンバープレートという組み合わせがいい。

現在はフォルクスワーゲン(ドイツ)・グループなので Wマークも見える。

 

こちらが喜ぶと、「シュコダ知ってるの?」と息子さんが驚いた。「日本では

レアな外車だから」と伝えると「こっちではそんな車じゃないよ」とちょっと

恥ずかしそうな表情をした。シュコダというかチェコ製の車に乗っているのは

庶民、中流階級ということらしい。お国変わればということかな。日本じゃ

400万円とかするのにね。

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ブダペストでも中心部の便利な場所にいたのに、なぜあんな田舎での暮らし

 を選択したのか、僕には理解できないんだ」。ご両親が老後に選んだ

菜園生活が、たぶん私より年下の、働き盛りで教育熱心な彼には謎の行動に

みえるんだろうと思った。上を目指して動いていると、下に見える(感じる)

ものも多くなるのかもしれない。 何にせよ、私はシュコダに乗れて幸せだったし

彼とのお喋りも楽しかった。コロナでロックダウンを経験した今の彼なら、

もしかしてご両親の選択がなかなか良いものだったと感じているだろうか。