桜が咲いたし雨も降ったし
ダーチャ小屋に家具を入れ、インテリアをあれこれ飾り付けていると
子供の頃に大好きだったままごと遊びの感覚になる。コロすけの影響で
自粛生活が長引きそうだ。先行きは不透明ながら店があるからこそ、
夢の領域で生きていられる。
雨の予報の日、桜の古木が開花した。晴れた日の桜色も美しいし
曇天のもと少しくぐもったような桜色もまた美しい。この桜の木は
80年前、回廊式庭園を造作した折に植えられたものだ。そう、
ダーチャの庭はもともとは和風庭園で、その名残に菖蒲や牡丹、
芍薬が毎年この時期になると芽吹く。
桜の木の下には可憐な花をつけた菫たち。さまざまなスプリング・
エフェメラル(春の妖精)に出会うたび、春だなぁと嬉しくなる。
庭の一角では、ほうれん草の芽も出てきた。前日、雨の降るのにあわせて
花の種まきをした。ハンガリー刺繍のモチーフになる草花やポピー、
矢車菊。いずれも2016年の種。どれだけ発芽するかわからないけれど
母が残した種なので、ひとつでも芽が出たらと思ってまいてみた。
2017年にまこうと母がとっておいた種。その年の夏、母はあちらの世界へ
帰って行き、2020年のこの時まで種は温存されていた。
夕方、予報から少しずれて雨が降り始めた。静かに穏やかに、雨が染み込んで
行く。ぬれた地面が深い色を帯びて行く。