水菜とほうれん草の種まき、桜の枝

 

もう4月も下旬というのに、早朝に雪マークが出ていた。

北海道の春はやっぱり油断ならない。

 

小春日和の日曜日、せっせと畑にはびこるミントやヤマゼリの根を

とりのぞき、ほこほこになった土に、水菜とほうれん草の種を

すじまきした。

最近、庭の奥のベリー苗のあたりに鳥たちが集まり何か食べている。

一斉に飛ぶ姿など最高に可愛いけれど、どうかすじまきした種に気づき

ませんようにと祈る。

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まいた個所がわかるように小人おじさんでマーキング。

手前の白いふわふわは越冬したラムズイヤー。

 

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亡き母が、私が好きそうだからと母の友達からもらっておいてくれた

小学校の給食トレー。老朽化した水場が、ユニークなトレーのシンクに

なった。今、コロすけで休校する小学校が相次いでいるけれど、この

トレーは小学5年生の教室に運ばれていたものだ。瓶牛乳を飲む時に、

誰かしらが笑わせ牛乳を吹かせるという定番のいたずらがあったなぁと、

このシンクを眺めていると懐かしい光景が浮かんで来る。

 

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給食トレーのシンク上の窓辺を外側から撮影したら、ダーチャにしている

小屋や母屋を建てた時に植えられたという樹齢80年の桜の木が写っていた。

この桜が毎年、見事な花をつける。今年は雪どけが早かったので、もしや

例年より開花が早い?と淡い期待をしていたけれど、結局、いつもどおり

ゴールデンウィークの開花になりそうだ。

 

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と思っていたら。樹木伐採で出た見事な桜の枝をいただいた。

1mはある大きな枝につぼみがたくさん。めちゃくちゃ嬉しかった。

 

春になると毎年、父が母のためにと山桜の枝をとってきた。恒例の

ことなのに、母は受け取るといつも顔を紅潮させて喜んだ。木の枝を

もらってそんなに喜ぶ?と思った小学生の頃と違って、今は母の

気持ちがよくわかる。

 

 

地球にキスをする

 

ここは場所柄、ウォーキングと犬の散歩をする人が多い。

まぁ、多いと言っても田舎にしてはと付け足しておこうかな。

 

ご近所にベルギー人のワタナベさんという方がいて、彼女も犬のビリーと

散歩している。会うとときどき、立ち話をする。

昨年、ルーマニア渡航の前日に寝間着のまま慌てて庭の植物たちの世話を

していたら、通りかかったワタナベさんが「いいよ、いない間みておくよ」

と声をかけてくれ頼もしかった。

 

ダーチャ小屋を修繕してくれるMさんと3人で話していた時、奥の森に咲く

水芭蕉の話題になった。毎年、早春になると咲く炎のような姿をした

力強い花。スプリング・エフェメラル(春の妖精)のひとつだ。

 

「今年も見たいね」ふたりとも、水芭蕉を見るのを楽しみにしている。

会話を聞いていたMさんが、水芭蕉に芳香があることを教えてくれた。 

あれ?そうだっけ?毎年、嬉しく観賞しているはずなのに香りのことは

意識していなかった。

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2020年の水芭蕉は小さめ。そして群生がとても少ない。

 

ミズバショウ

 サトイモミズバショウ

 学名:Lysichiton camtschatcensis Shott

 和名:水芭蕉

 英名:White skunk cabbage

 

 

今年の水芭蕉は小さく、少ない感じがする。例年より雪が少なかった

からか湿地の水かさも低い。でも、よく今年も咲いてくれました。

さっそくいちばん川べりの水芭蕉に顔を近づけると、ほんとだ。

ふわっと甘い香りが漂ってきた。

 

水芭蕉の炎みたいな白い部分は変形した葉の一部で、花は黄緑色の円柱

部分。よく見るとたくさんの小花がついている。学名に camtschatcensis と

あるように、シベリア、サハリン、カムチャッカ半島から日本に分布する。

シベリアやカムチャッカ水芭蕉は大きそうだなと、勝手なイメージ。

 

ただ英名を見るとスカンクの文字。スカンクといえばあの、

強烈なオナラで有名な。どうやら同じサトイモ科のザゼンソウ

混同されているらしい。ザゼンソウの匂いは強烈だそうなので

どこかでお目にかかったら勇気を出して顔を近づけてみよう。

  

 

水芭蕉を見に、ワタナベさんがやって来た。

「良い香りだった」と伝えると、「そう?!」

わくわくと顔を近づける時、

「あぁ、これは Kissing the Earth だね」と言った。

 

たしかに、ひざまづき水芭蕉に顔を近づける時の仕草は

まるで、地球にキスをするようだった。

自分もこの仕草をしたんだなと思うと何だか嬉しかった。 

 

 

妖精の杯

 

雪どけ。

春だよ、春が来た。

 

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庭に出ると、たち枯れたまま雪の下になった植物たち、

その上に折り重なる森の落ち葉が一度に現れました。

そうだ仕事であわただしくて、一息つい頃すでに庭は

雪の下だったんだ。昨年の秋冬のことをあれこれ思い出しながら

落ち葉を集めて土にすきこみ、枝払いしたままだった小枝と一緒に

枯れ草コーナーへ運びます。

 

朽ち木や落ち枝の上に残るシャーベット状の雪。

枯れ草の間で新緑が芽吹き、その横にとても鮮やかな真っ赤なものが。

どこからか飛んできた破けたビニール袋の切れ端かなと近づくと、

きのこでした。

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ベニチャワンタケ

 ベニチャワンタケ科

 学名:Sarcoscypha coccinea 

 英名:the scarlet elf cup(スカーレット・エルフ・カップ

 

早春の広葉樹林で見られるきのこで、英名のスカーレットは

黄色みの強い赤色のこと。そしてエルフは妖精。カップは杯。

妖精の杯。タロットカードの聖杯の絵が連想されます。

 

見つけたベニチャワンタケはだいぶん大きくなったもので

通常はとても小さいと説明書きにありました。

 

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翌日、別な場所で見つけました、小さな小さな妖精の杯。

ちょうど小枝についていたので、こびとの所にそっと置きました。

 

ふと、もしかしてこれまでも毎年、出ていたんじゃないかなと

常に何かに追われるようにあくせくと駆け足だった日々に

想いがめぐります。これまでも、この豊かな環境にくるまれ暮らして

きたはずなのに、見ているようで見ていなかった、

感じているようで感じていなかった。

 

ようやく、妖精がさしだしてくれる杯に気づいた

この春はあまりにゆったりしています。

 

ダーチャのある暮らし、始めます。

 

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店にしているダーチャ小屋の修繕がもうすぐ完成しそうです。

縁とはふしぎなもので、ご先祖さんが岐阜で郡まで同じ人からの紹介で、

素敵だなぁと思っていた古民家カフェをされていた方が手掛けてくれる

ことになりました。

 

こんにちは。東欧雑貨しまくま堂です。

ずっと心にあったダーチャを中心にした発信をして行こうということで、

新しくBlogを始めることにしました。

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仕入れでチェコハンガリーなどまわると、予算の都合で泣きたくなる

ような宿に滞在せざるを得ない時があります。だから宿が素敵だと

嬉しくてパワー倍増。小屋の修繕は、まるで今までの旅先で良かった

宿やレストラン、店が集大成したような、とっても良い雰囲気に

なりました。ハラショー!

 

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入り口のジャッキアップ中

 

小屋の老朽化が激しい分、壁をペイントする前に弱った部位の補強など

細かな作業の連続に手間と時間をかけて頂きました。くしくも

コロすけ(Covid-19 新型コロナウィルス)のことと時期が重なる転換期。

自身の問題点が浮き彫りになり不安や恐怖が押し寄せましたが、目の前で

小屋が素敵に修繕されてゆく様子に、いつしか頭の中で絡まっていた糸が

するするほどけて行くような心地よさが伴っていきました。

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典型的なダーチャの風景 ダーチャで過ごす緑の週末 1頁より

 

ところで、ここを「ダーチャ」と呼ぶようになったのは、東欧を旅するうち

自分の中にあった原風景が、ロシアの家庭菜園付きセカンドハウス

дача(ダーチャ)だったと気づいてから。 

 

ダーチャの語源は、与えるを意味する ダーチ(дать)。

ソ連時代のロシアでは、職場(国営)の労働組合に申請すると土地を

貰うことができました。平日は都会で働き、週末になると各自で通って

小屋を建て、畑を耕し作物を育てました。外貨を入れない経済対策を

とっていたソ連では、ダーチャのおかげで国内の食料自給率が高く

輸入品に頼る必要がなかったそうです。

*参考書籍 豊田菜穂子さん著・ダーチャですごす緑の週末

 

真冬のロシアで仕入れ中、ディーラーが供してくれたお茶やジャムは

ダーチャで採れた果実やハーブで作られたものでした。

無愛想でめったに笑顔を見せないディーラー夫妻が「春になったら

サンクトペテルブルグから100数十キロ離れたダーチャへ通うのだ」と

顔をほころばせて話した時、彼らにとってダーチャがどれほど大事な

場所かが伺えました。

 

私のダーチャはDIYは苦手だし、野菜づくりもうまくない。

ただ、木々の葉ずれや鳥のさえずり、陽光を浴び輝く花たちと

共にあるだけで至福に包まれる。この感覚とおおらかな風景、

可愛いインテリアはお楽しみいただけるかなと思います。

たまに心のことも綴っていきながら、この自然豊かなBlogが

点在する小さなオアシスのひとつになりますように。