下見板張りの応急処置、ナチュラル・ミステリー・プランター

 

ダーチャ小屋の外壁は、下の板に上の板が重なるように貼り合わさっている。

こういう貼り方を「下見板張り」というのだと、いつだったかみえた古民家や

歴史建造物に詳しい方が教えてくれた。

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今、Mさんことトクナイ先生に、この外壁の応急処置をして頂いている。ご本人は

謙遜するのだけれども行き届いた丁寧なしごとの数々は「センセイ」としか呼べず、

ダーチャを訪れた人(特にこれまでの様子を知っている人)は皆、いかにこの難易度

の高い建物を技術と遊び心でここまで瀟洒にしたかに感動し、「よい人にめぐり逢い

ましたね」「良かったですね」と一緒に喜んでくれる。そこに「ビフォー・アフター

ですよね」と言葉が重なる軽妙洒脱なやりとり。

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下見板張り風に貼ってくれた奥の1コーナー。一見、真っ白にペイントされた壁なの

だけれども、間近で見ると木目もわかる。こういう部分を発見しては感嘆したり感心

してくれる人が多いのもまた「もっとここを良くしたいなぁ」という原動力になって

いる。

 

こちらの懐具合の兼ね合いで外壁の修繕は少しずつ。当面は手をかけられる部分のみ

お願いする応急処置になるけれど、浮ついて外れそうだったり亀裂が入った板が

しっかりと打ちつけられて、もともとの外壁の間にパッチワークになる様が、愛嬌が

あって微笑ましい。

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下見板張り風の壁に、古いマチョー刺繍の飾りフレーム

 

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窓辺の先に、最近 見かけるたび破顔してしまう可愛いプランターを置いてある。 

 

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雪の下で越冬したムスカリだけのプランターに、どこからか飛んできた たんぽぽや

ふきが、おんなじサイズ感でナチュラル寄植えになったもの。意図せずして

出来上がる、こういう自然現象を発見する楽しさ。何が混植するかわからないので

ナチュラル・ミステリー・プランターと名付けよう。

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こっちは、オドリコソウ。

 

オドリコソウ

 シソ科オドリコソウ属

 学名:lamium album var. barbatum

 和名:踊子草

 

ミウムは園芸種がたくさんあってこれは自生するタイプ。別な場所には斑入りに

新種改良されたものも植わっている。試したことはないけれど踊子草は食用、薬効

もあるそうだ。

 

勝手に命名した「ナチュラル・ミステリー・プランター」は、土だけを入れた

プランターを置いておき、そこに自然とつく植物の様子を観賞する楽しみ方。

何がつく(根付く)かわからないところ、まったくもって作為がないのに意外と

いい感じになるのところがおもしろい。ベランダでも、土だけ入れたプランター

を置いておいたら、ある日、身近だけれど思いもかけない意外な植物が生えて

くるかもしれない。

 

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庭の奥の、こんもり茂ったスギナなどの草をよけた。

 

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あいたコーナーには野菜を植える予定。

 

ナス、ピーマン、ししとうはマストかなぁ。あとはどうしようかな。あ、トマトも。

トマトのそばにはやっぱりバジルを植えたいね。ナスタチウムもほしいなぁ。

というわけで。毎年、野菜苗を買いに行く農家さんへこのあと行ってきます。

 

諸君〜、春は苦いものを食べよ。

 

こんなタイトルにしたものだから、『攻殻機動隊』のタチコマソ連時代の

プロパガンダアートがいっせいに頭の中にほわほわと浮かんできてしまった。

OK、いったん頭の中を空にしよう、心をしずめよう。

 

先日、licaさんと山菜の話をしていた時に「春は苦味をとるといいのよ」と

教えてもらった。確かに春の味覚といえば山菜で、山菜って苦いよね。

諺にも「春の皿には苦味を盛れ」というのがある。苦味は五味(酸味・苦味・

甘味・辛味・塩味)のひとつ、中国の五行説では木(酸味)・火(苦味)・

土(甘味)・金(辛味)・水(塩味)にそれぞれ対応する。古来より毒には

苦味を含むものが多く、人は苦味を感じると吐き出すという本能的な反応を持つ。

山菜は苦くえぐみも強いけれど、細胞を活性化する栄養素がたっぷり含まれ

冬の間に体にたまった脂肪や老廃物をデトックスしてくれる作用も併せ持つ。

 

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ダーチャが山エリアというのもあるだろうけれど、私の周りには山菜や食に精通

している人が多く、恵まれているなぁと思う。ミックスハスキー メイシーちゃん

(この時 3ヶ月手前)のお父さんであるポカリさんも、いつも美味しい食材を

おすそわけしてくれたり、レシピを教えてくれる「おいしいものメンター」の

ひとりだ。

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採ったばかりの行者ニンニクをいただいた時の1枚。

 

<おいしいものメンター ポカリさんのレシピ1>

 1,行者ニンニクを切らずにそのままオリーブオイルでソテー

 2,全体に火が通ったらさっとワインをかける(赤でも白でも)

 3,とろけるチーズをのせる 

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手軽で簡単、アウトドアでも取り入れられる調理方法。

何より、行者ニンニクが豊富にないとできない贅沢な食べ方だ。

 

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そして昨日は採れたての立派なウド。惚れ惚れする深山のパワフルさ。

採れたての新鮮なウドはアク抜き不要。皮も柔らかくこのまま食べられるという。

ポカリさんが、また超手軽な調理方法を教えてくれた。

 

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<おいしいものメンター ポカリさんのレシピ2>

 1,ウドを細かく切る

 2,お味噌汁の具にする

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「ウドをお味噌汁に?」意外だったのだけれども、これが美味だった。ちいさな

味の新境地。こういう小さな発見、喜びのひとつひとつが日々の糧となり暮らしを

彩っていくのだと実感する。

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こちらは定番の酢味噌和え。ウドが新鮮なのでそのまま和えた。苦味と柑橘類の

ようなさわやかさが混じり合うこの独特の味。まさに、春の味である。

 

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またある日の食卓。

きのことウドのチーズ絡め・パプリカパウダーライスのワンプレート。

 

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昨年までおうちのあった跡地が一面、たんぽぽ畑になっている。

たんぽぽの花もベルギーでは‘たんぽぽジャム’として愛用されていると

licaさんに教わった。「そうだ、これって西洋たんぽぽなんだよなぁ」と

すっかり帰化した風貌の黄色い花たちを見ながら思う。たんぽぽも葉は

サラダにするけれど、やっぱり苦い。

 

あ、それで思い出したんだけど。「苦い」にちなんだ諺もうひとつ。

良薬は口に苦し。よく効く薬は苦いように、身のためになる忠告は素直に

受け入れにくいという意味だ。苦すぎると吐きそうになる。耳にイタイと

聞きたくなくなるものだけれども。諸君〜、春は苦いものを食べよう。

 

折り合いをつけながら日々は過ぎてゆく

 

庭のあのスペース開墾したいな〜.. 家の中 整理して仕事しやすくしたいな〜..

あれしてこれしてああやって..。今日はこれできなかった、それは明日にしようと

折り合いをつけながら日々はあっという間に過ぎてゆく。

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もし、自分が2人いたら。あれもこれもそれも、全てできるのにな〜...

いや、待てよ。2人いたら、どちらかがどちらかの自分に話しかけては

「ここ座らない?」「ちょっと休む?」って2人でずっとお茶いただきながら

お喋りしちゃって、むしろ1人ならできてた事もできずに1日が終わっちゃう

んじゃないかな。なんて空想も楽しかったりして。 

 

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 ヤマアジサイ(山紫陽花)ともみじのグリーン

  

ヤマアジサイ

 アジサイアジサイ

 学名:Hydrangea serrata

 和名:蔓紫陽花、山紫陽花、沢紫陽花

 英名:mountain hydrangea、tea of heaven

 * tea of heaven =甘茶

 

これまで葉や花をいける楽しみ方しか知らなかったヤマアジサイ。近所にできた

お店のあみちゃんが、この葉が食べられることを教えてくれた。つやつやした葉を

炒めたり、揚げ物にしたりできるという。私がこれまで除草に難儀してきた

ヤマゼリも、実はヤマゼリではなくヤマミツバ(食べられる)だったことが判明

した。彼女のおかげで身近な自然がより一層、身近なものになっていく。

 

ちなみにあみちゃんのお店は‘五風十雨’という。五日ごとに風邪が吹き十日ごとに

雨が降る。気候が穏やかで順調な豊作の兆し。そして、世の中が平穏無事である

ことのたとえに用いられる言葉だそうだ。

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向かって左側の木に巻き付いているのがヤマアジサイ。つる状に伸びる葉がつやつや。

 

ところでいつも、植物の名前の学名や英名を載せているのには理由がある。同一の

植物がいろんな名前で出回っているので、その植物の話題が出た時に、和名と学名、

英名のどれかを伝えれば相手に通じやすいのだ。ドイツで滞在した宿で紫陽花の

話をした時も「ハイドランジア」という呼び名のおかげで相手との意思疎通が

スムーズだった。まぁ記憶してなきゃ名前は出ないし、どうしても伝えたければ

指差しすればいいのだけれども。

 

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友達にもらったオブジェ、実家から持ってきたプランター、割れた鉢。いろいろな

ものが、とりあえず置いてある。今日はどこから手をつけようか。

 

 

かはたれ時、たそがれ時

 

今朝は早くに目が覚めた。夜明け前。太陽ののぼる少し前のあの、宵闇に

うっすら白みを帯びる時間帯。視界が徐々に明るくなって行く‘かはたれ時’。

訪れた今日を歓迎するかのように鳥たちのさえずりが始まる。

 

かはたれ時は、薄闇でそこに人がいるのはぼんやりとわかるのだけれども、

それが誰かまではまだわからない、日の出前の「彼は誰?」な時間帯。

そして夕暮れ時は「誰そ彼?」‘たそがれ時’という。まるでなぞなぞ遊びの

ように、日の出日の入の時間帯を表すふたつの言葉。どこか憂いを帯びた

アンニュイな表現に、そういえばしばらく触れていない気がする。

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錆びついた天使の向こうで鉄線(てっせん)の枝が暴れている 

 

先月いただいた大きな桜の木。徐々に葉桜になるその姿も美しく、

通常は見上げるばかりの桜の花をこんなに間近で観賞できる雅に自然と

頭が垂れる。

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桜を眺めていたら、いつだったか仕入れで春のプラハを訪れた際、

「良い季節にチェコを訪れましたね!今、園内では桜の花が満開です」と

プラハ城下の庭園を案内してくれたヴァツラフさんが喜びあふれる表情で

迎えてくれたことを思い出した。園内のレストランでランチをご馳走になり

伺った豊穣の女神イシュタルのこと。イシュタルはシュメール神話の

女神だそうだ。後にシュメールで「アヌンナキ」と呼ばれる神々が

プレアデスを母体とするニビル星からこの地球へやって来たという説を知る

が、その話は置いておいて。ヴァツラフさんは日本語が堪能で中国で生活して

いたこともある。この時は「篆刻の先生が中国からみえているんです」と

言っていたっけ。最初の数行しか読んだことないけど『ホモサピエンス全史』

を著したイスラエル歴史学者 ユヴァル・ノア・ハラリに似た印象の人だった。 

 

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未完成も含めて愛おしい、網戸越しの庭

 

こんな連想あそびを楽しみながら、日々はわりと穏やかに過ぎていく。

それもこれも、ようやく「海王星」の扱い方を覚えたからではないかと

思っている。海王星のことを教えてくれたのは友人のワカちゃんだ。

彼女は311の震災の時、東京から恋人のトジマ君と北海道に移住してきた。

黒いレースと紫色のシルクのベールをまとったような独特の雰囲気をもつ

人で、私のイマジナリーが過ぎ脱線しがちな会話にも爆笑でつきあってくれる。

 

ワカちゃんは観察眼に優れていて、占星術やタロット占いをする。そして

料理がべらぼうに上手い。たまに見てもらうのだけれども、その時に

「想像豊かなのは第一ハウスに海王星があるからでしょうね」と教えて

くれた。それで海王星に興味がでて調べてみたら、太陽系第8惑星、

英語ではネプチューン。惑星記号は「♆」。心なしかソビエト連邦の国旗に

似ている。内部は氷と岩石、外側はガスでできた巨大ガス惑星だ。

 

占星術的な意味としては目に見えないもの、不透明かつ神秘的なものを

司る。潜在意識、夢、想像力の豊かさ。海のように広くすべてを受け入

れる、境界を越える。インスピレーション。ネガティブに作用すると、

嘘、中毒(アルコールや薬物など)、夢見がちで現実逃避。暗いイメージ

へ引っ張られやすい。輪郭がぼんやりして物事が曖昧になる。私は

太陽星座が魚座なのだが、魚座もまた海王星的性質をもつ。そして

魚座の守護星・支配星も海王星だ。...海王星...影響力、大じゃぁないか...。

 

ひとり空想している分には楽しいのだが、ある事象からある事象へと

とりとめもなく次々 連想が起こるので、現実生活でついうっかり口にして

ドン引きされることがしばしばある。お叱りを受けることもある。ふわふわ

しているのは楽しいけれど、この世界でそれだと生き辛い。本来、豊かな

恵みであるはずのイマジネーションがお荷物になっていた。とりあえず

グランディングだろうといろいろ試した結果、呼吸に意識を向ける

瞑想が日常的に取り入れやすく、ゆっくりとだが地に足がついてきた。

 

 


頭スッキリ 呼吸瞑想 ~音名 AとG (10分)

 

呼吸に意識を向ける瞑想は starseed kuさんという人の YouTube 動画で

行っている。これだと家にいながら好きな時間に好きな場所で瞑想できる。

何て便利で助かる機能。YouTube 万歳なのである。で、AとGの音が

お豆腐やさんのピーポーに似ているので、この動画を流すと家人から

「お、お豆腐やさんやってるね」と声がかかる。

 

唯一、更新を楽しみに愛読しているのも kuさん Blog だ。kuさんはいわゆる

宇宙語(ライトランゲージ)を話すヒーラーで、善悪の判断を超えたフラット

な視点が響いてくるんだと思う。ある時はミッシェル・ガン・エレファント

この曲を「エゴ(自我)の終わりの曲」と紹介していた。陰陽のバランスが

とれたこういう感性、大切にしたい。あ。あと、こんなに kuさん kuさん言って

いるがもちろんお会いしたことはない。


世界の終わり / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

 

 

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むろん自身を構成する要素は占星術やスピリチュアルな面ばかりではない。

むしろそっち側だけだと「祟りじゃ〜」とか「こんなん出ましたけど〜♪」とか

言い出しかねない。まぁ役者は多い方が層に厚みが出ておもしろいけれど。

もし煮詰まって先が見えなくなっているのなら、自分を読み解く上で役立つ

ツールのひとつとして、取り入れてみるのもアリだと思う。 

 

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さて、日がさして来たので今日の綴りはこの辺で。バイナラ。

 

 

桜の雅、すべては泰然と育まれてゆく

 

樹齢80歳の桜が散ると、あたかもタイミングを見計らっていたようにして

ダーチャ内の桜が開花した。残像の余韻を知り尽くしたVJの匠の技のような

見事なフェードアウト・フェードイン。桜の雅による粋な演出。

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ここからの眺めも麗しく

 

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ここからの眺めもまた美しい。

 

 

ダーチャには、もともとこの庭に植わっていた水仙や赤いチューリップなど

オーソドックスな園芸種と、母にもらったマジェンタピンク色のチューリップ

など現代的な園芸種とが混在している。

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セントウレア・モンタナなど自分で植えた苗はどこにあるかマーキングしてあって

わかるのだけれど、毎年、水仙などが思いがけない場所で咲き始めたりする。

こちらで移植したわけでもないのに、当初なぜ植物が移動するのかわからなかった。

つきあっているうちに鳥や森のどうぶつ達が運んでいることに気がついた。

それからは彼らにまかせてあって、今年も「ここで咲く?」と小さな宝さがしを

喜んでいる。

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ポピーやルピナス、ディルフィニウムなど宿根草が植わっている場所。

 

 

八重咲きやラッパ咲きなど水仙がたくさん咲いてくれたので、ダーチャ内の

東欧フォークロア・コーナーにいけている。この明るい黄色の水仙に、

ナルシストの語源となったナルキッソスの物語(性格に難アリ美少年

ナルキッソスが水面に映る自分に恋をし泉を離れられなくなってそこで

死に水仙になったというギリシャ神話)があるというのが面白い。

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水仙には毒があって「食ベルナ危険植物」だけれども、こうして明るい黄色で

華やかに咲いていると、目でいただくビタミンという感じがする。

 

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花瓶にしているのは、前にハンガリー在住のりかさんにいただいた

ハンガリーはちみつの容器。蜂のエンボス加工が気に入っている。

 

東欧雑貨の仕入れきっかけで知り合った りかさん。こちらからコンタクトをとって

ブダペストで出会ったのは仕事で渡欧するようになった初期のことだ。仕入れで

お世話になるはずが、いつしかスピリチュアルなことを共有し合う仲になった。 

何がきっかけで出会って友達になるかというのは本当にわからない。人生の

シナリオというか、俯瞰してみれば遅かれ早かれ、会うことになっている人とは

出会うようになっているものなんだろうな。

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夜桜

 

偶然にも、新しく親しくなった人もlicaさんという。 こちらのlicaさんは

うちの店には珍しい男子高校生のお客さんだった たくみ君のお母さんだ。

ある時、ひとりでふらり店に来てくれた。きらきらとした華やかな印象の

人でフィーリングがあい話しやすかった。たくみ君のお母さんだとわかった

時は驚いたけれど、今では縁をとりもってくれた彼に感謝している。

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お喋りがはずみ日が暮れた。楽しい夜を優しく外灯が照らしてくれる。

 

すべては泰然と育まれてゆく。

 

鞍馬寺、桜、ナルシマさん。

 

昨日は満月だった。

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満月と、ダーチャ東南にある斜面の木々

 

ネイティブ・アメリカンは5月の満月のことを「フラワームーン」と呼んでいると

知り、素敵だなぁと思う。5月の満月はウエサク満月とも呼ばれる。京都の鞍馬寺

では毎年5月にウエサク祭(五月満月祭)が行われるそうで、このお祭に参加した

事はないけれど、訪れた時の鞍馬寺はキラキラした微粒子が降り注いでいるようで

音はしないのにシャンシャンシャン... という鈴の音が鳴り響いているような、とて

も金星的だったのを覚えている。顔つき満月

 

何で金星?って思った方は鞍馬寺さんサイトをどうぞ ↓

www.kuramadera.or.jp

  

 

この辺りのシンボルツリー的な、樹齢(推定)80歳の桜が咲いた。

かつては立派な回廊式庭園があったという最初に植えられたのがこの桜。

染井吉野じゃないし、何だろう。種類はわからないけれど優しく穏やかな桜色。

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ダーチャとして暮らしているこの場所は、戦時中に東京から疎開してきた

ナルシマさんという人のお宅だった。この人が銀座で洋装店を営んでいて

ここで銀座洋装店という店を開いた事からダーチャ前の坂は「銀座坂」と

呼ばれるようになった。銀座坂は通学路になっていて、この辺りでは

ご高齢の人から若い人まで、みんな親しみを込めてこの坂をそう呼ぶ。

 

... 店を開けていると、狸が来てくれる日もあるんですけど...。

 

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ダーチャ小屋の桜もつぼみがふくらんできた。

 

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銀座洋装店のナルシマさんが住んでいた木のおうちは、わざわざ農家風に

造った当時としてはモダンな建築だった。ちなみに店として開放している

のはこの建物と同じ敷地内にある小屋だ。ナルシマさんか。犬島さんとか

神子島さんとか「島」がつく名字って格好いいよな。My Island。ちなみに

神子島さんは「カゴシマ」さんと読む。合気道を習っていた時の物腰優しく

穏やかな素敵な先輩だった。

 

家系図を調べるのが趣味な知人が「家系図をたどっていくとご先祖さん同士

がつながっていることがよくある」という話をしていた。仲の良い人同士の

家系図をたどってみたらご先祖さん同士も親友だった、とか。歴史浪漫だし、

そういう遊び方もあるのかと風流を感じた。知人は「もう少しで安倍晴明

つながりそうなの」と言っていた。つながったんだろうか。今度あったら

聞いてみよう。

 

で、「もしかすると」とかつて調べた父方の家系図を見てみたけれど、

ナルシマという名字は見当たらなかった。では、母方は。自分の父、

父の父、そのまた... と遡っては住んでいた場所の戸籍謄本を送ってもらう

作業が面倒臭くなり、調べていない。でもひそかに、「ナルシマさんの

3番目のお嬢さんが嫁いだ先のエンドウさんのハトコにうちの家系図

エンドウさんがいて...」とか、つながっているかもしれないストーリーを

空想していたら、ある時ひょんなことから「つながっていた!」という

展開が来るなこれは、と思っている。

  

長物の枯れ葉を集めていたら海馬からマラムレシュの光景が蘇った。

 

地面にひざをつき土に触れていると、海に入ってはしゃいでいる時のような

何ともおおらかで愉快な感覚になる。そうか、私にとってここは海なんだ。

庭に浮き玉や貝殻を置く趣味も、であれば理解できる。土でできた海は溺れる

心配がない。土中から太いみみずが出てくると、おぉ何とよく肥えた肥沃の

... 大地よ... あーやっぱここ海じゃない陸だわと我に返ったりしながら庭の

手入れは進んでゆく。

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最近は森の手前にある通称‘トムソーヤの小屋’周りの整えに乗り出した。

(いつか写真を載せます)

 

タカノハススキの立ち枯れたままだったもの、昨秋に刈りとった長物

(と呼んでいる)の葉ものを熊手やレーキで集めては枯れ草置き場に

運んでいるうち、ふと。これってマラムレシュで見かけた光景じゃない?

 

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よく見ると、いっぬ。

 

海馬から蘇った、牧草を刈り取り運ぶマラムレシュの美しい光景。

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頭の中ではこんなイメージ。

 

海馬(カイバ)はタツノオトシゴのような形をしている。脳の中で、新しく

取得した情報はこの海馬でファイリング(整理整頓)されてから、記憶の倉庫

である大脳皮質にたまって行くという。であればマラムレシュを訪れたのは

昨年の6月だから、海馬というより大脳皮質から蘇ったものかもしれないな。

何よりやっぱり、海なのである。

 

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空き家だった伝統建築を改修した宿。

 

屋根の目のような形は COW'S EYE(雄牛の目)と呼ばれマラムレシュ地方で

よく見かけた。猛々しい雄牛の目で各家を守るとされ、古くはこの窓が侵入者

を防ぐ見張りの役目も担っていたそうだ。

 

マラムレシュはルーマニアの奥地、ウクライナとの国境にある山岳地帯だ。

昔の建物がそのまま残り、昔の生活様式で暮らす人たちのいるこのエリアは

「生きた博物館」と表現される。確かに、これまで各地の民族博物館で見て

きた建造物や壮麗な木工芸が施された柱のある家屋が並び、そこで人々が

ふつうに暮らす光景は、遡った時代にタイムスリップしてしまったかの

ような不思議な錯覚に陥る。

 

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宿の中はルーマニアン・カントリー

 

昨年、滞在したこの宿の周りでは実際の農作業が行われていた。と言うより、

地元の人にすれば、仕事場にあった空き家がある時ゲストハウスになって

外国からも観光客が訪れるようになった。しかもかなり喜んでいるよね、と

いった感じだろうな。

 

ここは連れて行ってくれた人も辟易とするような奥まった悪路の先にあった。

運営しているのはルーマニアのヒッピー的ライフスタイルを送る若いファミリー。

レイヴ会場にいそうなサイケデリックなドレスに身を包んだ紫色の髪の奥さんの

タトゥーの蝶が印象的だった。敷地内には滞在した宿のような建物が点在し、

宿の受付兼ファミリーの住居、バー、レストランとロングハウスが3棟、

これから改修を予定している建物も何棟か見かけた。ファミリーはルーマニア

地方都市クルージュナポカ出身。ここはマラムレシュから最も近い都市で、

車なら2〜3時間だ。ただしこの辺りで車を持っている人は少ない。道中で

何度もヒッチハイクする人を見かけた。公共交通機関もない辺鄙な場所では

ヒッチハイクが移動手段として普通にあって、乗る側も乗せる側も承知している。

 

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トラディショナルな建造物に、なるべく伝統を残しつつ現代的な感覚で

取り入れられたインテリアが馴染む。

 

奥さんは「クルージュの家族からは、あなたのやっていることは理解できないと

言われているわ」と肩をすくめた。志を同じくする仲間とコツコツ取り組んで

いるとさらっと話してくれたけれど、これだけの建物を補修改修し、広大な

敷地の除草など維持するにもかなりの時間と労力がいるだろう。ご実家としては

収入の面でも心配なのであろう。「でも、私達はこの場所が大好きなの」。

日本と同じくルーマニアでも、その場所に魅了され、朽ちていくだけの建物を

改修保存する人たちがいる。

 

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可愛いおばあちゃん

 

頭にプラトークをまきスカートをはいた東欧の可愛いおばあちゃん。大好きな

スタイルだ。スカートにエプロンというこの野良着スタイル、日本だと、

もんぺみたいなものだろう。おばあちゃん達は娘時代からのスカートを

こうして齢を重ねてもはいていて、それを「貧乏くさい」「ダサい」と感じる

タイプの人たちもいる。それは人の感性だから、その違いを楽しめばいいや。

とにかく、このスタイルは可愛い!

 

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この鍬を持つおばあちゃんのように、年をとってもスカートをはいて

紫色のタイツをはける可愛い人でありたい。

 

 

ちなみに、みやこうせいさんの本を読むとマラムレシュに誘われます。

 

ルーマニア賛歌―Europe of Europe

この、ゲゲゲの鬼太郎みたいなエプロンもマラムレシュ地方の民族衣装。

村で配色が変わるそうです。

羊と樅の木の歌―ルーマニア農牧民の生活誌